ノブコブ徳井が恩人・東野幸治を「腐り狂った超天才」と評する理由とは

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 平成ノブシコブシ徳井健太がお笑いについて熱く考察する『敗北からの芸人論』が2月28日に発売されます。

 今回はその中の一編「腐り狂った超天才――東野幸治」をお届けいたします。

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「ホワイトデビル」との出会い

 東野幸治さんは、僕だけでなく多くの芸人にとってヒーローだ。なんせ『ダウンタウンのごっつええ感じ』に出ていた人だ。

 30年近く前、僕と同じ90年代に多感な時期を過ごした30代40代で、このコント番組の影響を受けていない人間なんていないだろう。特に芸人を志した人には、無条件で深く頭と心に刻まれ擦り込まれている。

 圧倒的なカリスマ性と面白さ。笑わせるということの格好良さと尊さを、毎週日曜日の夜8時に教えてもらっていた。そんなヒーロー東野幸治さん。僕は芸歴20年近くになっていたが、お会いしたこともお話ししたこともほとんどなかった。

 それが突然、2019年の夏に『よしもと芸人音声データ』という、東野さんがMCで毎回芸人をゲストに招き話を聞くラジオみたいな番組への出演が決まった。僕はその番組の存在を知らなかったが、桂三度さんや「天津」の木村卓寛さんもゲストとして出ていた。

 何も聞かされず、何の打ち合わせもなく、ただ新宿の吉本本社でぼーっと待っていると突然、小さなスタジオに何人かいたスタッフたちが立ち上がった。するとホワイトデビルと呼ばれる男が、本番の3分前に入ってきた。

「ごめんなー」と言っていた。うわー、東野幸治だ、と僕は思った。

「いやー、木村くんがなー、なんやかんやで出られなくなってん、知ってるよな? ごめんなー」

 大きな声で笑いながら、持っていた小さなカバンを下ろし、「やろか」と言ってそのまま小さなスタジオの中にある更に小さなレコーディングスタジオみたいな所に東野さんは入っていった。え、もう本番ってこと? 嘘でしょ? そう思ったが僕もつられてその狭い空間に入り、二人きりになった。

 外から重たいドアが閉められ「よしもと芸人音声データ」と東野さんが大きな声を出すと、そのまま1時間の収録が始まった。

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