文豪ヘンリー・ミラー、イタリア大富豪…国際結婚した日本人女性の悲劇

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ニュース番組に出て勉学を続けさせてくれなどと訴えたため…

〈高校生は結婚できない? 京都の私立女子高で学校が退学強要〉

 昭和60年10月7日付の朝日新聞夕刊の記事である。

〈京都市右京区にある浄土真宗系の伝統女子校、私立光華高校の3年生の女生徒がアメリカ人青年と結婚した。届けを受けた学校は「結婚は学校生活となじまない。他の生徒にも影響を与える」と退学を言い渡した〉

〈彼女や両親は「法に触れることをしたわけでないし、納得できない」と反論し、学校側と話し合いを続けている〉

〈この生徒は3年生の山田良美さん(19)。両親の同意を得て、9月19日、米国で空手教師をしているロバート・チャールズ・ワルツさん(23)と結婚、神戸のアメリカ総領事館で婚姻の手続きをすませ、神戸市内の区役所にも届けた〉

〈翌日、「私、結婚しました」と担任に報告したところ、びっくりした担任は校長に報告。数日後、学校側は「退学願を出して下さい」と良美さんに伝えてきた〉

〈良美さんは「もっと勉強したいし、あと半年の高校生活を続けたい。これまでまじめやったし、卒業証書もほしい。退学願は出しません」と答えた。校長は「学校の好意がわからないのなら近く、退学処分にする」と通知した〉

 退学を勧告した理由として、学校側は、

(1)日本では高校在学生の結婚は社会的にも認められておらず、勉強と結婚生活を両立できる状況ではない

(2)他の生徒に与える影響が大きい

――などの理由を挙げていた。

 学校側が挙げている理由は至極もっともなものばかりである。私学なのだから独自の教育方針というものもあるだろうし、それに従って退学勧告したまでのことだろう。

 要は学校内の問題に過ぎないのだが、当の山田良美さんがニュース番組に出て勉学を続けさせてくれなどと訴えたため、とたんに話がデカくなった。

〈京都の女子高生結婚、学校側が在学認める〉(同年10月9日付同紙朝刊)

〈6月来日/空手修行/7月知り合う/9月末ビザ切れ〉

 そのせいか、学校側は2日後にあっさりと当初の方針を撤回。こうも簡単に圧力に屈してしまうようでは、初めから大した教育方針などなかったと疑われても仕方あるまい。

 ともあれ、このニュースにはどこか釈然としない部分がある。

 あと半年で卒業できるのなら、それまで待てばよさそうなものなのに、大慌てで結婚をし、退学を迫られると新聞やテレビに訴える。何か変だ。

 本誌記者が現地に飛ぶと、すぐに事情が判明した。当時の取材メモにはこうある。

〈6月来日/空手修行/7月知り合う/9月末ビザ切れ〉

 少し補足すると、ワルツ青年は6月に空手の修行のために来日し、7月に良美さんと知り合い、9月末に観光ビザが切れる。入籍は9月19日。

 もうお分かりだろう。この女子高生は、滞在期間を延ばそうと目論んだプータローまがいのアメリカ人に、いいように利用されただけだったのである。

 しかし、ひょっとしたら2人は本当に愛し合っていたのかもしれない。そこで本誌は少し様子を見ることにした。

1年半後に再び京都を訪れ、若夫婦を探したのだが、案の定、ワルツの姿はどこにも見当たらなかった。

 取材に当った記者によれば、

「ワルツは親に結婚の承諾を得ると称して、入籍の9日後に故郷のミズーリ州に帰って、それっきり。結局、2人は入籍をしただけで1日も一緒に暮していなかった。妙に思ったのは、良美さんがクラスメートに結婚のことを一切話していなかったこと」

「就職を棒に振り、学校中を騒がせ、テレビにまで出て勉強を続けさせてくれと訴えながら、夫が戻ってきませんとは、さすがに言えなかったんだろう」

 良美さんの母親の話。

「娘はすでに別の方と結婚して幸せに暮しています。子供も3人います。もう古いことですから放っておいて下さい」

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