麻原彰晃の遺骨はアレフと無関係の次女へ それでも一件落着とはならない事情

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 東京家裁は9月17日、2018年に死刑が執行された麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚(執行時63歳)の遺骨と遺髪を、次女(39)に引き渡しを認める決定をした。麻原には、6人の子ども(男2人、女4人)がいるが、彼女は何度も面会に来ていたため、遺骨の引き渡し先として相応しいと判断されたという。もっとも、麻原自身は執行直前、刑務官から遺体の引き渡し先を問われた際、四女(31)を指名していた。四女は今回の審判を不服として、東京高裁に抗告する予定だ。

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 麻原の死刑が執行されたのは18年7月6日。3日後の9日に火葬された。その後、四女の代理人、滝本太郎弁護士は東京都内で記者会見を開き、

「遺骨をパウダー化し、太平洋の不特定の地点から散骨する。その費用を国が支援して欲しい」

 と要望。その際、四女もこう主張していた。

「オウム集団を増長させないために、遺骨をオウムの方に行かしてはいけない」

 一方、7月7日、麻原元死刑囚の妻と次女、三女は連名で上川陽子法相と東京拘置所長に対し、遺体の引き渡しを求める要求書を提出した。

心は遠い世界に……

 次女は、麻原との面会の様子をブログでこう綴っている。

《今日は2018年6月の10日。
(中略)わたしがお父さんと最後に会えた日から、今日で10年の月日がたちました。》

《10年前のあの日、2008年6月10日はじっとりと汗ばむほど暑くて、青空が広がっていたね。(中略)午後3時10分、東京拘置所1階の面会室にわたしたちが入ったあと、いつものように車いすに乗せられたお父さんが運ばれて来た。
お父さんの姿を見て、弟の緊張が一気に高まるのがわかった。目を見開いて息をのみ、助けを求めるようにわたしの顔を見た弟。》

《お父さんの顔は赤く腫れあがり、皮がむけ、むけ残った皮膚がところどころ顔に張り付いている状態だった。赤くなっているのは、顔ばかりではない。手や肘にでていた赤みは、何が原因だったのだろう。それでも、前回の面会の時よりはまだましだったかもしれない。》

《「あちこち赤いですが、何かかぶれでもしたのですか。それとも、何かに刺されましたか」
弟の心配そうな声が、耳朶を震わせる。
しかしお父さんはまったく反応しない。アクリル板を挟んで、体は数十センチ先にあるのに、心は遠い世界に行ったまま……。》

 三女はブログで、麻原が東京拘置所の職員と意思疎通ができなかった。四女を遺体の引き渡し先として指定したのは作られた話ではないかと主張していた。さらに、遺骨を宗教的・政治的に利用する動きがあっても、家族が利用させない。今はオウム真理教から派生したいかなる団体とも関係しておらず、派生団体は解散してもらいたいとの考えを明らかにしていた。

 つまり、四女と妻・次女・三女、双方とも、オウムとは関係はないと言っていたことになる。こうした中、家裁は次女に遺骨の引き渡しを決定したのだ。

遺骨は仏舎利

 改めて言っておくと、オウム真理教は2000年、アレフ(Aleph)と改称して新たな宗教団体を発足した。2013年には、妻が次男を教団に復帰させようとしたところ、三女が反対。これを機に分裂した。現在、アレフの本部は埼玉県越谷市にある。公安調査庁によると、信者数は約1650人という。

「麻原の妻は、今でも教団のバックにいます。アレフが分裂して、妻と三女が対立しましたが、親子としては今も繋がっています。次女と三女、長男は埼玉の越谷市の元信者名義のマンションで一緒に暮らしています。彼女たちは、教団とのつながりはありません。麻原の妻と次男は、越谷市で一緒に住んでいます」

 と解説するのは、元アレフ代表の野田成人氏。

「アレフはヨガ教室を使って、今も信者を増やしています。資金は12億9100万円もあります。今回遺骨は次女に引き渡されることになりましたが、母親から分骨を求められたら応じてしまう可能性があるとみています。遺骨は仏舎利、遺髪は御蓬髪として、神聖なものになります。もし教団の手に渡ることがあれば、組織を活性化させるために使われる可能性があります」

 まだまだ一件落着とはいかないようである。

週刊新潮WEB取材班

2020年9月23日掲載

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