「政治的ツイート」はデメリットばかり? 「思想の発信」をやめた理由(中川淳一郎)

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 この原稿を書いているのは8月31日、私のセミリタイアの日です。そしてこれは1年1カ月に及んだ「ツイ禁(ツイッター禁止)」の最終日にもあたります。これまでの編集者・PRプランナーとしての人生は終了し、ライターに戻ります。「オレら忙しいので代わりに編集しろ!」と言われた場合は単発業務であればやるので、「編集者」の肩書は残しますが。

 なぜツイッターをやめていたかといえば、私は数々の機密情報を扱う広告会社・博報堂とこの1年ほど業務委託契約をしていたから。そこから離れるので、ツイッターを復活することができました。

 1年以上、自分はツイートしない状態だったのですが、いい歳した立場のある方々が政治的発言をして炎上し、「劣化した」なんてドン引きされている様子を遠巻きに見ていました。実は日本人って政治的イシュー、大好きだったんですよね。

 毎度、左右両派がボコボコにやり合い、謝罪したりツイートを削除したりする様を見て、「オレ、ツイッターやってなくて良かった!」と思うことしきりでした。あくまでも「告知」だけを代理でしてくれ続けた弊社・Y嬢に感謝します。

 私は元々右派に対する違和感があり、彼らを叩きまくっていましたが、その後、左派の方が実は攻撃性が強いことを認識し、彼らを叩いていました。すると、途端に「レイシスト」「ネトウヨ」認定をいただくわけですよ。ここ数年は、左派が自分の考えに合致しない発言をする人間を糾弾する流れができています。

 ちなみに、元来中道左派的な、むしろリベラルな糸井重里氏と佐々木俊尚氏も今や左派からすれば「ネトウヨ」認定です。

 こんなツイッター空間、ただバカバカしいだけの空間なので、私は今後、政治的なツイートをする気は一切ありません。しても何の意味も、メリットもない。「トムとジェリーは一生仲よくケンカしな」としか思えなくなりました。

 その中には、名前は挙げませんが、一時代を築いたアラ還のモノカキの方々もいますね。彼らの文章を素晴らしいと思って過ごした私の20代~30代。あれから約20年、ツイッターは完全にこうした方々を「炎上誘発的存在」にしてしまったのでした。実に寂しい。

 雑誌やラジオで語っている内容はまともなのに、ツイッターになると途端におかしくなってしまうアラ還の諸先輩方。現在47歳の私としては、あんな恥ずかしいオッサンになりたくないので、これからもツイッターではこうした自らの思想に基づいた偏った発言をしてはいけないな、と思いを新たにしました。

 さて、9月1日からはツイッターを復活させましたが、基本的には呑気で楽しい情報ばかり発信していくつもりです。政治について物申すと、どちらにせよ両派から意見が殺到して、ただただウザいだけだし、ひたすら「ブロック」をし続けることになり、本来のツイッターの楽しみ方ができなくなるんですよね。

 せっかくの、自由に発言できる素晴らしいツールであるツイッターを最大限活用するには、余計な政治的発言、やめた方が余生は楽しいですぜ。バカと無駄なやり取りしないで済むしね。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2020年9月17日号掲載

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