神戸山口組「井上組長」が下した「山健・中田組長」への処分にみた「愛」

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「井上vs中田」状況下における《「除籍」いたしました》の意味とは?

 6代目山口組が分裂し、当代の司忍組長に弓を引いた者たちが神戸山口組を結成して5年余が経過した。昨年11月に6代目ナンバー2の高山清司若頭が府中刑務所を出所して以降、6代目側の攻勢は強まり、いわゆる「神戸山口組の乱」は平定されたかに見える。そして、それと軌を一にし、神戸側の中核組織・山健組が「4代目井上組長派」vs「5代目中田組長派」とに割れた。今回、その井上組長側から中田組長に下された処分が話題となっている。

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 写真の通り、処分内容を記した“状”には「除籍御通知」とあり、差し出し人は「神戸山口組 組長 井上邦雄」となっている。

《元神戸山口組々員 中田浩司(62歳)神戸在住》

《右の者 当組の規約に反する行為此れ有り 令和2年9月10日付けを持ちまして「除籍」いたしました》

 山健組の当代は、2018年5月に井上邦雄組長から継承した5代目の中田浩司組長。この状は、4代目が5代目に下した処分である。

 ヤクザの世界の主だった処分内容に重い順から、絶縁、破門、除籍がある。

 ごく簡単に言って、絶縁は2度と組には戻れない、破門も本人の不手際などによる処分だが復帰は可能、除籍にも懲罰的意味合いがないわけではないが、本人の希望が反映されることもあり、元の組との交際も可能だ。

「除籍は引退の際にも使われる処分で、通知する側としても“仕方なく縁を切る”というニュアンスがありますね」

 と話すのは、元6代目山口組系義竜会の竹垣悟氏。

「分裂騒動があっても即座に絶縁にしなかったのは理解できる」

「今回の処分には井上組長の中田組長に対する愛を感じました。中田組長は健竜会、山健組と、井上組長の後を追うようにして出世してきたわけです。裏返せば、それくらい井上組長は中田組長に目をかけてきた」

「中田組長は現在、殺人未遂容疑で逮捕・起訴されて拘置所にいるとはいえ、愛がなければすぐに絶縁していますよ」

「5代目山口組の渡辺芳則組長は自身が作った健竜会の人間をことに寵愛したとされ、中田組長もその1人。かつては渡辺組長のドライバーを務めていたと聞いています」

「健竜会は井上組長が育ったところでもあり、当然5代目の考えを受け継いできたはず。しかし、今回の処分で健竜会は自分の傘下から外れることになるわけです。これには同情を禁じ得ない。分裂騒動があっても即座に絶縁にしなかったのは理解できますね」

 ここで、過去の山口組内の抗争事件を振り返ってみよう。

“ボンノ”こと3代目山口組の菅谷政雄若頭補佐が引き起こした「三国事件」は、3代目の田岡一雄組長に詫びを入れて解散するまで4年。5代目山口組の宅見勝若頭をハジいた中野会が大阪府警に解散届を出すまで8年。

 そして神戸側が6代目を割って“戦争”が始まったとするなら5年が経ったことになる。

「私も過去に“戦争”を経験しましたが、例えば車の助手席に座れば、サイドミラーとバックミラーをずっと凝視して襲撃に備えるなんかは当たり前。それでも後ろからダンプカーに踏み潰されたら元も子もないんですがね(笑)。幸い、そういうことに遭遇することはありませんでしたが……」

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