小池都知事が「ピークアウト」を無視する理由 反対する福祉保健局長は左遷され…

国内 社会 週刊新潮 2020年9月10日号掲載

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安倍総理の置き土産

 辞任前の置き土産のように、安倍総理は新型コロナウイルスはさほど怖くないと認めたが、政府の方針への逆張り姿勢をあえて貫くのが、東京都の小池百合子知事だ。結果、たしかに都知事は輝き、栄えるが、代償として生け贄の数がかぎりなく膨らもうとしている。

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 8月28日午後5時からの会見で、辞意を表明した安倍総理だが、同じ場では新型コロナウイルス対策についても、新機軸が打ち出されていた。

「本日、夏から秋、そして冬の到来を見据えた、今後のコロナ対策を決定いたしました」と切り出した総理は、「この半年で多くのことがわかってきました。3密を徹底的に回避するといった予防策により、社会経済活動との両立は十分に可能であります」と続けた。

 そして、40代以下の致死率は0・1%を下回る一方で、亡くなった人の半数以上は80代以上なので、そうした重症化リスクが高い人に重点を置いた対策に、いまから転換する必要がある、という旨を述べた。

 本誌(「週刊新潮」)はかねて、致死率が低い新型コロナウイルスの感染防止策を徹底しすぎると、社会経済が回復不能な打撃を受ける。致死率が高い高齢者や基礎疾患がある人に絞ってケアし、社会経済は平時に戻すべきだ――と主張してきた。

 政府の本音も、実はそれに近かったと思われる。しかし、国民の間に新型コロナへの恐怖が深く根づくなかでは、「怖れすぎるな」というメッセージは「命の軽視」とも受け取られかねないため、政府も躊躇していたように見受けられる。

 それがようやく「転換」という語を用いて、コロナとの向き合い方を改める旨が表明されたのだ。

 それともう一つ、安倍総理はこうも述べた。「感染症法上、結核やSARS、MERSといった2類感染症以上の扱いをしてまいりました。これまでの知見を踏まえ、今後は政令改正を含め、運用を見直します」。

 新型コロナを、致死率がはるかに高い感染症と同等に扱うことの不合理は、本誌も繰り返し指摘してきた。感染対策はようやく正常化の途につくかもしれない。

東京都は相変わらず…

「これまでは厳重に対策するのが良心的だとされ、少しでも対策を緩めようとすると、テレビのワイドショーなどで“人命軽視だ”と批判されました。安倍総理が引き際に方向転換を打ち出したのはよかった。新型コロナはそれほど危険な病気ではないと、事実上初めて言ったわけですから」

 と評するのは、アゴラ研究所所長で経済学者の池田信夫氏である。

 むろん、それは安倍総理の独りよがりの判断ではない。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は8月21日、「今回の感染拡大はピークに達したものと考えられる」と発表。24日の分科会後の会見でも、国立感染症研究所の脇田隆字所長が「基本的な感染対策が行われていれば、通常の生活で感染が拡大する状況ではない」と明言した。「転換」はあくまでも、蓄積された科学的知見を踏まえて打ち出されたわけだ。

 そんな中、日本から独立でもしたか、と錯覚させられるような表明をしたのが、首都たる東京都である。小池百合子知事は8月3日から31日まで、夜10時までの時短営業を飲食店などに求めていたが、8月27日の会見で小池知事は、あらためてこう訴えた。

「いまの段階で緩めることなく、引き続き23区内におきましては、お酒を提供するお店、そしてカラオケ店に、夜10時までの営業時間の短縮を要請します。要請期間につきましては、9月1日から15日までといたしまして、1事業者あたり一律15万円の協力金を支給いたします」

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