今季限りで与田監督解任も…低迷中日の新監督に相応しいのは立浪、山本昌、それとも…

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 球団ワーストとなる7年連続のBクラスに低迷している中日。8月に入って5カード連続で勝ち越すなどチーム状態は上向いてきたものの、首位巨人の背中は遠い。そんななか、ファンの不満の矛先が向いているのが指揮官である与田剛監督の采配だ。

 7月7日のヤクルト戦で起用ミスから野手を使い果たして投手の三ツ間卓也を代打に送ったことは論外だが、それ以外にも首を傾げたくなる場面は少なくない。8月27日の阪神戦でも、3点を追う8回表に長打が出れば同点という満塁のチャンスを作ったが、ベンチにまだ野手が多く残っているにもかかわらず一塁ランナーのアルモンテに代走を送らず、次の回の守備からベンチに退けている。同点を狙うのであれば、走力のある選手を代走として起用すべきであるし、もし打線が繋がって9回か10回に再び打席が回ってくることを期待するのであればアルモンテをそのまま残すべきだろう。

 チーム打率、本塁打数ともにリーグ下位に沈んではいるものの、この試合に限らずベンチにいる戦力を上手く使いきれていないことは確かだ。球団と与田監督は昨年から3年契約を結んで入るものの、こうした状況が続くようであれば、シーズン終了後の解任ということも十分に考えられる。

 そうなってくると、気になるのが後任の監督人事である。2000年代後半から黄金期を築いただけに候補となる人材は少なくないが、地元名古屋で待望論が根強いのは立浪和義だ。

 中日一筋で22年間プレーし、通算2480安打をはじめ数々の球団記録を持つまさに“ミスタードラゴンズ”である。多くの名選手を輩出したPL学園出身者の中でもその野球に対する姿勢や鋭い観察眼はトップとも言われており、そういうバックグラウンドを含めても、当然有力候補となるだろう。

 ただ、これだけの実績がありながらもコーチとして一度もユニフォームを着ていないのはグラウンド以外での問題が多いためだと言われている。そのあたりを球団としてどう考えるかが、大きなポイントとなりそうだ。

 立浪に次いでファンからの支持が高いと思われるのが山本昌、山崎武司の投打のレジェンド二人だ。山本昌はチーム在籍32年(引退試合出場の2016年は除く)、球団記録となる通算219勝と投手OBの中ではナンバーワンの実績の持ち主で、その卓越した“投手理論”にも定評がある。若手に有望な投手が少なくないだけに、投手王国再建の切り札として期待される存在だ。

 一方の山崎はオリックス、楽天でもプレーしたものの、最晩年に中日に復帰した。通算403本塁打は、中日でプロ生活をスタートした選手では歴代1位の記録である。地元愛知県出身ということもプラス要因だ。この二人は現役時代から親交も深いだけに山本監督、山崎ヘッドコーチ、もしくは山崎監督、山本投手コーチという形も考えらえる。どちらにせよファンからの期待感が膨らむ首脳陣になりそうだ。

 もう少し若い世代では、黄金時代を支えた和田一浩、荒木雅博などが候補となってくる。和田は西武で現役時代をスタートさせているものの、出身は純地元ともいえる岐阜であり、選手としての実績も中日時代の方が輝かしいものがあった。捕手としては優しすぎるというのが欠点と言われていたが、解説者としてはキャッチャー出身らしい鋭い視点での指摘も少なくない。性格的に勝負に徹することができないイメージはあるものの、指導者となってから違う面を見せることも十分に期待できるだろう。

 荒木は2018年まで現役としてプレーしており、今回挙げた候補の中でも最も若いというのが魅力である。引退と同時にコーチに就任しており、指導者としてのキャリアをスタートさせているというのもアドバンテージだ。若い頃は運動能力に任せたプレーが目立ったが、攻守ともに年齢を重ねる中で考えるプレーを身につけていった印象も強い。派手さはないものの、通算2045安打、球団記録となる通算378盗塁と実績も申し分ない。直近ではなくても、近い将来監督となっても全くおかしくない人材と言えるだろう。

 ここまでOBから候補を挙げたが、これまで球団とは縁のなかった大物監督を招聘するというのも一つの手段である。落合博満は中日でプレー経験はあったものの、決して“OB色”が強かった人物ではなく、そのことも奏功して黄金時代を築いた。

 当時は阪神の監督を務めていた星野仙一に負けないだけのネームバリューのある人物ということで、落合に白羽の矢が立ったと言われている。発言権の強かった白井文吾オーナーは今年3月の株主総会で退任していることもあるだけに、これまでの方針とは異なるようなアッと驚く人物にチーム再建を託すことも十分に考えられるだろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年8月31日掲載

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