コロナ過剰対策による「認知症パンデミック」の実態 医師が証言

ライフ 週刊新潮 2020年8月27日号掲載

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除菌スプレーを吹きかけられ…

 残念ながら、○○警察と称される不寛容は無数に見られる。都内在住のOLは、こんな目に遭ったという。

「8月10日、都内で友人と2人で信号待ちをしながら話していたら、1メートルくらい前にいた中年女性が突然振り向いて、こちらに向かって携帯用の除菌スプレーを吹きかけてきたんです。私たちはマスクをしていましたが、友人が“沖縄に行って、人がいないビーチでマスクを外した”と話していたので、吹きかけてきたのかもしれません」

 他県ナンバーの自動車が囲まれてしまう、というのは日常茶飯事で、やはり都内在住の20代の女性が話す、次のような例もある。

「北海道のある地域にタクシーで入ったら、東京から来たんじゃないか、とそこら中で白い目で見られました。また、小池知事が会見で“帰省や旅行を控えてください”と言った8月6日、鎌倉の居酒屋で食事をしていたら、店主と客が“ここに東京から来ている人なんていないよね”と話していて、その後、店主から“どこの出身?”と聞かれたので、“東京から来ました”と答えたら、場が凍りつき、だれも目を合わせてくれなくなりました」

 東京都とは同じ生活圏のはずの神奈川県鎌倉市にして、こうなのである。

高齢者に異変

 感染症に詳しい浜松医療センター院長補佐の矢野邦夫医師は、

「知事が“帰省しないように”と強調しすぎると、青森の例のような過激派を焚きつけてしまう可能性があります。それに、帰省する人をゼロにしようと考えること自体、間違いです」

 と言って、続ける。

「コロナ禍で高齢者の足腰はだいぶ弱っていると感じています。屋内で転倒、骨折して病院に運ばれる人は増えているし、家に閉じこもっているとご飯を食べなくなり、メンタルも参ってしまう。みなさん感染したら重症化すると思って、外出しないように心がけているからです。だからなおさら、息子や娘が親の様子を見て“ここまですると逆に健康によくないよ”“散歩したほうがいい”などと助言することが大切になります。その点でも帰省には意味があります」

 知事たちが「帰省を控えろ」「移動するな」と強調する背景には、重症化リスクが高い高齢者を守るという建前がある。ところが、こうした圧力のせいで高齢者がむしろ危険にさらされている、という現実があるのだ。内科、循環器科医で、大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授の石蔵文信氏も言う。

「ここ2週間ほどで数カ月ぶりに会った3、4人の患者さんが、筋力や認知機能の低下が見られる“フレイル”という状態になっていました。以前は自転車で通院していた方が歩けなくなって妻が付き添ってタクシーで来たり、はきはきしていた方が認知症のように喋れなくなったり、2階にある外来まで階段を上がれなくなったりしていたのです。ふつう人は少しずつ年をとるのに、短期間で一気に衰えてしまったのです。私が定期的に診察している高齢者は100人もいません。そのなかに3、4人というのはかなりの確率。日本全体では何十万人もの人が弱ってしまっているのではないでしょうか」

 単純計算すれば、高齢者の4%程度に異変が起きていることになる。

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