夏の甲子園 「稲村亜美」が今も忘れない名勝負 2012年「桐光学園VS今治西」

スポーツ 野球 2020年8月22日掲載

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そんな彼女のベストゲームは…

――さて、ここまで高校野球に対して思い入れのある稲村さんが選んだベストゲームを教えてください。

稲村:私が一番刺激を受けた試合です。それは2012年の第94回大会の“桐光学園(神奈川)対今治西(愛媛)”の一戦です。

 私、このとき桐光学園の2年生エースだった松井裕樹(東北楽天)投手と同じ年なんですよ。高校2年生にもかかわらず、この試合で夏の甲子園における1試合での最多22奪三振という記録を作ったんですね。

 私的には、同じ年の男の子がこんなに頑張っているんだっていう刺激を受けました。いちおうもう芸能のお仕事はやっていたんですけど、当時まだ仕事も全然なくて……っていうときに、同じ年の男の子がこんなに頑張っているんだ、じゃあ私も頑張ろうっていう気持ちにさせてくれたんです。

――この試合は大会2日目の第3試合だったんですが、最初からご覧になっていたんですか?

稲村:いや、途中からです。甲子園は母も好きなので、第1試合からテレビがついているんです。だからたまたま観る形になったんですが、いや~~感動しましたね。

 もう圧巻のピッチングでした。ストレートはもちろん良かったんですけど、とにかくスライダーの曲がりが凄すぎて。野球を辞めて当時、まだ私も2年経ったくらいだったので、うらやましいなっていう気持ちもありましたし。

 まぁ、女子が甲子園に出られないことはもちろん分かってたので、う~ん、なんか憧れましたね。

――この試合で松井投手は22奪三振のほかにもう1つ新記録を打ち立てているんですよ。それまで和歌山中(現・桐蔭)の小川正太郎投手が保持していた連続奪三振記録です。1926年の第12回大会準決勝でマークした8連続が夏の甲子園での最高記録だったんですが、松井投手はそれを塗り替える10連続奪三振を記録しました。

稲村:それって86年ぶりの快挙っていうことですよね。その歴史の長さといいますか、むしろ誰もそこまで更新できなかったっていうのも凄いと思いますね。

 まぁ、でも高校野球ならではですよね、22奪三振とか10連続奪三振っていうのは。もうプロじゃなかなかね、観ることができないですからね。

――その松井投手に対して小細工せずに立ち向かっていった今治西打線もお見事と言いますか。

稲村:逆に私だったら、その試合に出られたっていうことがもう嬉しいと思います。挑んで結果、不名誉な記録を作られちゃったかもしれませんけど、みなさんの記憶にも残ってますからね。「あ~~あの今治西ね」ってなるじゃないですか。いい話の種にはなるので、私だったら嬉しいのかなって。「あの試合で松井投手に3三振食らって記録達成に貢献したのは俺だぞ!」って語れますからね(笑)。

――結局、この試合は松井投手の快投もあって、桐光学園が7-0で快勝するんですが、このあとの試合でも松井投手は奪三振を重ねていきます。2回戦の常総学院(茨城)戦は19奪三振、3回戦の浦添商(沖縄)戦は12奪三振と、もはや奪三振マシーン状態でした。それでも常総学院には6安打されて5点も取られてるんですけどね。

稲村:でも、それ以上にクルクル回るバットの数のほうが……と言いますか、そっちのインパクトのほうが強く記憶に残っているのも松井投手の凄さだと思います。

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