京都ALS嘱託殺人が過去の事件と“まるで別物”と批判される理由

国内 社会 2020年8月1日掲載

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 もはや安楽死論議以前の「トンデモ殺人」でしかない。昨年11月、京都市中京区のマンションに住む難病患者の林優里さん(当時51)がSNSを通じて「安楽死」を依頼した医師二人によって薬物を投与されて殺されていたことがわかった。

 7月23日に嘱託殺人容疑で逮捕されたのは宮城県名取市でクリニックを開く大久保愉一容疑者(42)と東京都港区の山本直樹容疑者(43)。二人は主治医でもなく、遠方から訪れて初対面で殺すという前代未聞の殺人である。

たった10分で「任務完了」

 京都府警中京署の調べでは、昨年11月30日夕刻、二人は林さんのマンションに知人を装って訪れ、付き添いの女性ヘルパーを別室に行かせ、その間に「胃ろう」を通じて薬物(バルビーツ酸系の鎮静剤・過剰摂取すると呼吸停止などに至る)を投与し、急性薬物中毒で林さんを死亡させた。異変に気付いたヘルパーが主治医に連絡し、主治医が110番した。ヘルパーに求められた訪問者記録に偽名を書いた二人がマンションにいたのはたった10分程だった。

 林優里さんは同志社大学を卒業、社会人になってからも米国に留学して建築学を学び、帰国後は設計事務所などに勤めていた。テニスなどのスポーツ観戦が好きな活発な女性だったが9年前に歩行に異常を感じ難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断された。最近は手足も動かないが「親に迷惑をかけたくない」と一人暮らしをし、ヘルパーが24時間態勢で世話していた。

 京都府警などによると、林さんは18年末ごろ、一般に公開されるツイッターに「来るべき苦しみの恐怖と日々戦っています」などと書き込んだ。これを読んだ大久保容疑者が数日後、安楽死を望む林さんのツイッターに「作業はシンプルです。訴追されないならお手伝いしたいのですが」と返信。林さんが「お手伝いしたいのですがという言葉が嬉しくて泣けてきました」などと返した。昨年8月、大久保容疑者は「自然な最期まで導きますが」と名取市のクリニックに来ることを提案した。林さんは「決意したらよろしくお願いします」と、まだ安楽死の依頼を決断した様子ではなかった。

 9月に林さんは主治医に栄養投入をストップする「死」を求めたが、「自殺幇助罪になる」などと断られたことなどを伝えた。しかしその後は、他者が見られない直接のメールで大久保容疑者とやり取りしていた。

 大久保容疑者は報酬として二回に分けて合計130万円を山本容疑者の口座に振り込ませていたが、そのやり取りメールを消去するように要求していた。

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