米中対立激化で韓国「二股外交」の限界 国論分裂の先には「核武装」?

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2020年7月28日掲載

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中国の侵攻に米軍は動かない

――双方から同時に殴られたら、どちらに付くのですか?

鈴置:より強く殴る方の言うことを韓国は聞きます。米中とも、この点はよく理解していますから、殴る時は力いっぱい殴るでしょう。下手すると韓国は双方からボコボコにされます。

 米国は「経済的な焦土化」で留めるでしょうが、中国は軍事行動に出るかもしれません。韓国政府が東シナ海の岩礁、離於島(イオド)上に海洋構造物を建設したことに対し、中国は自国のEEZ(排他的経済水域)内にあると抗議しています。

――離於島に中国軍が攻めてきたら、米軍が反撃するのでは?

鈴置:「構造的不和」により、米韓同盟は希薄化しています。中韓双方が管轄権を主張する岩礁を奪取されたくらいでは、米国は動かない、と見る韓国人が増えています。

韓中ビジョンフォーラム」で、国立外交院のチェ・ウソン教授は以下のように語っています。

・軍事的衝突の状況で、米国が直接的に介入することはないだろう。状況の悪化を防ぐ程度の介入となろう。
・韓米同盟には不確実性がある。同盟がこのまま続くと考えるのはあまりに楽観的である。

最後の手は核武装

――米中双方から「ボコボコ」に。韓国人はどうするのでしょうか。

鈴置:核武装する可能性が高い。多くの韓国人が、核さえ持てば周辺国からなめられない、と考えています。韓国のネット空間では、米中板挟みに陥るたびに核武装論が語られてきましたし今また、そうなりました。

 ミロスだって、それなりの軍事力さえあればアテネから滅ぼされはしなかった。そもそも攻撃されなかったはずです。もちろん、中立も維持できました。

 KIEPの報告書が「力さえあればいじめられない」と主張したことを思い出して下さい。それを報じた中央日報も「米中よりも進んだ技術を持てばいい」と書きました。

「半導体用素材の開発がそんなに簡単にいくのかなあ」と考える人も多いでしょうが、それと比べれば「核」はさほど難しい技術ではありません。韓国なら半年もあれば核弾頭を完成できると見られています。

 核弾頭の運搬手段も韓国は確保済みです。6月23日、韓国軍は射程800キロの弾道弾の試射に成功しました。文在寅大統領も観覧しました。

 聯合ニュースの「韓国軍が試射の弾道ミサイルは中距離級 北朝鮮全域が射程圏」(6月23日、日本語版)などが報じています。なお、
北朝鮮全域だけではなく、名古屋や大連も射程に入ります。

 韓国海軍は垂直発射管を備えた3000トン級のミサイル潜水艦も建造しています。一番艦の実戦配備は2022年1月の予定です。いずれも核武装には必須。韓国はいつでも核保有を宣言できる体制を整え終わったのです。

米国に見捨てられれば「核」しかない

――同盟を打ち切って核武装。左派政権ならではの動きですね。

鈴置:ええ。もっとも、中距離弾道弾の開発もミサイル潜水艦の建造も、保守政権が始めた事業。保守こそが核武装の準備を着々と進めてきたのです。ただ、米国との関係悪化を懸念して大声では唱えなかっただけです。

 もし、米国が同盟の弱体化や廃棄に動けば、保守も堂々と核武装に動くでしょう。米国に見捨てられる以上、自前の核が必要不可欠です。

 左派ならまだ、「北朝鮮の核の傘に入る」手がありますが、保守政権の韓国は周り中が敵となるのですから。結局、左右は「核武装」に共通分母を見出すことになるわけです。

 先ほど、「米韓同盟が消滅する際は、日本も米国の焦土化作戦に加わるだろう」と申し上げました。

――少し過激な意見かと。日本人にそんなハラがあるでしょうか?

鈴置:米韓同盟消滅には、韓国の核武装が伴う可能性が高い。日本人もそれを知ったら、韓国に対する姿勢を変えるでしょう。米国以上に熱心に焦土化作戦に取り組むのではありませんか。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

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