文在寅大統領、高支持率に強気も…大物政治家にセクハラ告発続出が死角に

国際 韓国・北朝鮮

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セクハラに敏感な若い世代は…

 一方で、文在寅政権に不安要因がないわけでもない。一つは、不動産の高騰である。これまで文政権は発足後21回も不動産対策を実施してきたが、まったく効果がない。最近は対策を打ったら、住宅価格が急騰してしまった。これでは庶民のマイホームへの夢が遠のくばかりで、与党寄りの参与連帯も批判している。さらに、文大統領がかつて重責を担った廬武鉉政権で広報首席秘書官を務めた趙己淑・梨花女子大学教授は、現政権での不動産政策において「専門性が不足」していると痛烈な苦言を呈した。こうした状況のなか、韓国政府は7月10日に22回目の不動産対策を発表したが、韓国社会の目は冷ややかだ。

 もう一つの要因は、与党の大物政治家のセクハラ疑惑である。9日に遺体で発見された朴元淳ソウル市長がセクハラで告発されていたことも発覚し、韓国全土に衝撃が走ったばかりであるが、与党の要人によるセクハラ疑惑は相次いでいる。2018年3月の安熙正・忠清南道知事を皮切りに、今年4月には呉巨敦・釜山市長が相次いで告発され、この2年間で3人にのぼる。

 不動産政策の失敗は、これからマイホームを手にしようとする30代後半から40代にかけて、また、セクハラ疑惑は20代から30代の年齢層に対してとりわけ大きな衝撃を与える。彼らは与党支持層の主流を占めるが、特に、セクハラに敏感な若い世代は、支持政党への見切りをつけるのも早いと言われている。

 順風満帆に見えた文在寅政権も、ここへきて支持率低下の要因を抱え込んでしまった。与党の支持者は国民全体の約4割を占めると言われ、それを頻繁に切ると黄色信号が灯る。もしもそうなったら、韓国政府はどう動くのか。支持率が40%台で下落傾向にあるのだから、そうのんびりとはしていられないだろうし、その方法の一つとして、日本へのけん制が考えられる。

 そういえば、対日姿勢での文在寅大統領と康京和外相との役割分担がどうも気になる。文大統領はこのところあからさまに日本を批判することはないが、康京和外相は、冒頭でも述べたように、なかなかの強面である。この2人の態度の違いがどうもこのところ、北朝鮮の金正恩と金与正の対韓姿勢における役割分担と、実によく重なって見えてしまう。北朝鮮がそうするのは、韓国との関係を完全に切ることなく、北に有利なように韓国を動かそうという目論見があるからだと言われているが、韓国もそうなのかもしれない。

平井敏晴
ノンフィクション作家。ソウルの大学で日本関連の講義をしながら、東アジアの文化や社会について文筆活動を行っている。専門は、美学、精神史。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月13日掲載

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