外資による土地買収で国土が「不明化」する――平野秀樹(姫路大学特任教授)【佐藤優の頂上対決】

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人も不明化

佐藤 いきなり大量の外国人が入ってきて、きちんと管理できるか、という問題が出てきますね。ここで平野さんは、「人の不明化」について懸念されている。

平野 もともと国内には9万人弱の行方不明者がいますが、技能実習生は約42万人いて、うち約9千人が行方不明になっています。さらには外国籍の小中学生約2万2千人の就学実態もつかめていない。合わせると現時点で3万人の行方がわからない。これは氷山の一角でしょう。どうも日本という国は、土地を管理したり、人を管理したりするのが不得手ですね。

佐藤 中には危ない人たちもいます。「背乗(はいの)り」と言いますが、日本人の戸籍を不正に取得し、その人になりすます。ロシア対外情報庁の諜報員が黒羽一郎という人物になりすまして、スパイ活動を行っていたことがありました。1995年に発覚しましたが、それまで30年以上、黒羽一郎として生活していた。彼は中央アジア出身で、日本人に見える顔立ちなんですよ。

平野 北朝鮮の工作員による背乗り事件もありましたね。

佐藤 通信社の記者から聞いたのですが、「背乗り」らしき人物を調べていたら、駅のホームの端を歩くなよと、警告があったそうです。その人物は、米軍基地の周辺ばかりへ何度も引っ越していた。実際に背乗り事件はいくつもあるわけですから、かなり怖い話です。

平野 背乗りではありませんが、国境離島で、それに類する話を複数聞きました。島に外国人女性がやってきて、スナックを始める。他より値段を安くし、地元の市役所とか役場の人が来やすい店作りにして、やがてそこで知り合った地元の人と結婚する。でも急に旦那さんが死んでしまうんですね。実際にそこに住みついていますから、不気味としか言いようがない。

佐藤 もちろん何かの意図を秘めて入国してくる人はいるわけです。一方で、平野さんは大勢の外国人が住みつくことで、その地域のガバナンスが利かなくなる、ガバナンスが不明化するという指摘もされています。

平野 例えば、北海道の占冠(しむかっぷ)村は、コロナ前の人口が1600人で、その32%が外国人です。中でもトマム地区は820人中514人と半数を超えていました。

佐藤 トマムはけっこう好きな場所で、ホテル・リゾートのクラブメッドに行くのですが、あそこは外国の雰囲気ですね。公用語が外国語で、客も半数以上が外国人ですから、日本人も英語が使える人が多い。

平野 そうした環境になると、当然、彼らの意見を地方行政に反映させざるをえなくなります。しかも占冠村は、予め投票資格等を条例で決めた上で住民投票をする常設型住民投票条例を制定していますから、事実上の外国人参政権が実現している。この常設型住民投票条例は、苫小牧市や猿払村など北海道の12自治体で制定されています。外国人問題を無視できないところが多い。いまは労働者として受け入れたり、大学が留学生を迎えたりする形ですが、この先、それが自治体行政にどういう影響を与えるか心配しています。

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