大物暴力団の裁判にナイフを持ち込もうとして逮捕された22歳「無職男」の不運

国内 社会 2020年6月23日掲載

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福岡地裁で現行犯逮捕

 暴力団トップの裁判が開かれる地裁に、刃渡り約9センチのナイフを持った男が現れたら、警察はどうするだろうか?

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 まずは報道を見てみよう。フジテレビのニュースサイト・FNNプライムオンラインは6月15日、「裁判所にナイフ持ち込み 22歳の男逮捕 『魚釣りの道具としてバッグに入れていた』 福岡市」との記事を配信した。

《15日朝、福岡市の裁判所に刃渡り9センチあまりのナイフを持ち込もうとした22歳の男が、銃刀法違反の現行犯で逮捕されました》

《入り口の持ち物検査で発覚し、警察が駆けつける騒ぎとなりました》

《容疑を認めた上で、「魚釣りの道具としてバッグに入れていて忘れていた」などと供述しているということです》

 地元福岡市に本社を置く系列局、テレビ西日本が作成した記事だ。しかし、いくつかの重要なポイントに触れていない。取材にあたった他社の記者が説明する。

「実はこの日、福岡地裁では指定暴力団『工藤会』総裁の野村悟被告と、ナンバー2で会長の田上不美夫被告の公判が開かれる日だったのです。2人は元漁協組合長の射殺事件、看護師と歯科医の刺傷事件、元警部銃撃事件の“市民襲撃4事件”で、組織犯罪処罰法違反などの罪に問われています。この裁判を男性は傍聴しようとしました。当然ながら裁判所は、かなり警戒していたはずです。そんな折、入口の検査で男性の持ち物の中から刃渡り9センチのナイフが見つかったのですから、大騒ぎになったことは想像に難くありません」

 Amazonなどでナイフを検索すると、刃渡り8センチのサバイバルナイフや、刃渡り9センチの皮むきナイフなどが表示される。どちらも想像以上の大きさがある。

 地裁や県警の緊張は尋常ではなかっただろう。男性はヒットマンと誤解されたのかもしれない。銃刀法違反での現行犯逮捕は当然だろう、と受け止めてしまう。

 テレビ西日本の記事に、ネット上では一部の掲示板が反応した。特に文中で、現行犯逮捕された22歳の男性を《無職》と報じたことが、あらぬ憶測を呼んだ。

《釣り道具でもアウトだろw長すぎるw》

《無職じゃなきゃ逮捕まではいかなかったな》

 ところが、詳しく状況を取材してみると、誤解が少なくない。いわゆる“ベタ記事”のため、充分に行数を割けていないのが原因のようなのだ。

「この男性は福岡市内の高校を卒業し、“東京六大学”の1つである有名私立大に進学しました。今年の3月に卒業したのですが、通信社の共同通信社から内定を得て、4月に入社予定だったのです。ところが、がんに罹患していることが分かり、福岡の実家に戻って治療を受けることになりました。現在は少なくとも第三者の閲覧ができない状態になっているようですが、男性は自身のFacebook(註:現在は閲覧不能)に経緯を報告しています」(同・記者)

 この結果、男性は共同通信社に来年21年4月の入社予定となった。1年延びたことで、「無職」と報道されてしまったのだ。

「『無職』とテレビ西日本が報じたのは福岡県警の発表に準じたからですが、県警は『大学生でもないし、共同通信社への入社は来年だ』と判断して広報したのでしょう。実際、無職であることは歴然とした事実です。しかしながら、結果として読者に間違ったイメージを与えてしまったことは否定できないと思います」(同)

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