支持率急落! 韓国で自称「慰安婦団体」が“被害者中心主義”を掲げ続出する悲劇

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慰安婦問題とはまったく関係のない人物も

 北朝鮮による挑発で文在寅政権への支持率が低下する中、新たな動きである。元慰安婦の李容秀(イ・ヨンス)さんの暴露によって、尹美香(ユン・ミヒャン)議員が率いた正義記憶連帯に対するさまざまな疑惑が溢れ出た結果、韓国社会ではこれまでの正義記憶連帯の運動のやり方に多くの批判が起きている。と同時に、被害者中心主義を掲げた新しい元慰安婦関連団体も出現し始めている。

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 6月16日、大邱(テグ)のある市民運動家は「アイキャンスピーク」(仮称)という新しい慰安婦団体の結成を予告した。韓国の日刊紙「韓国日報」の報道によると、同団体は運動家中心だった既存の慰安婦関連団体とは異なり、被害当事者中心に運営されるという。具体的には元慰安婦たちと関連する講演やセミナーを中心に活動する。

 団体の結成を主導している市民運動家は、同紙のインタビューで、「団体は、市民の後援金で運営され、活動による収益金は全額を被害者に渡すつもりだ。会計の透明性を確保するため、外部に会計処理を任せることにした」と強調した。韓国の独立記念日である8月15日の発足を目標にしており、現在は団体の趣旨に賛同する人を中心に約20人人が参加していると、同紙は紹介した。

 慰安婦問題に詳しいジャーナリストは、この団体の性格について次のように説明する。

「仮称ではありますが、団体名からもわかるように、李容秀さんを前面に出した活動をするものと予想されます。『アイキャンスピーク』は、李さんが2007年に米下院公聴会に出席し、慰安婦被害事実を証言したという実話を基に作られた映画のタイトルと同名。この映画は、韓国で320万人の観客を動員したヒット作品です。李さんは5月の記者会見で、青少年たちに慰安婦問題について、きちんと教える教育活動を推進したいと言っていましたが、この団体は李さんの活動をサポートし、一方で慰安婦問題において発言権を得たいという目的もあると思われます」

 しかし、この“抱負”はたった1日で水の泡となってしまう危機に直面した。肝心な李容秀さんの家族が同団体と市民運動家に対して疑惑を提起したためだ。

 李容秀さんの養女は、自身のSNSに関連記事のリンクを共有し、「誰だ、お前? 誰も知らない」と訴え、団体結成を推進する市民運動家を狙い撃ちした。彼女は「アイキャンスピークという団体は当事者(李さん)も知らない。電話番号を知らないはずもないのに、一度ぐらいは事前に連絡して、本人の意向を聞いてみるのが順番ではないか」と指摘した。

「団体を推進していた人物は、大邱2・28民主運動記念事業会のキム・ギョジョンという人物でした。2・28民主運動とは、1960年代の李承晩(イ・スンマン)政権時代、大邱の学生を中心に始まった抵抗運動です。慰安婦問題とはまったく関係のない人物が、事前に相談もなく李氏の名前を掲げた慰安婦団体を作ろうとしたことについて、養女は当惑したのでしょう。養女は、キムさんが某日刊紙の寄稿文で、李容秀さんの2007年の米国訪問を支援したかのように書いていたことについても、李さんの訪米を積極的に支援してくれた人物はキム・ギョジョン氏ではなかったと非難しました。この言い争いには李さんの側近まで乗り出して、『李容秀さんとキム氏の団体は全く関係ない』と主張。現在は韓国日報の記事も削除されてしまいました。しかし、キム氏が団体結成を諦めたかどうかはまだ分からない」(前述のジャーナリスト)

 一方、元慰安婦の家族らも新たな団体を結成する意思を表明した。

「中央日報」は19日、元慰安婦のキル・ウォノクさんの息子を中心とする元慰安婦家族らが「慰安婦家族対策協議会」を作ったと報道した。キル・ウォノクさんは、正義記憶連帯が運営する麻浦の憩いの場で生活していた唯一の元慰安婦だ。今月6日、休憩所の所長が自殺したことで、キルさんは息子に連れられ、実家に戻ってきていた。

 韓国メディアによると、キルさんの息子と妻は検察の調査に、「麻浦所長が管理していた母の通帳から、家族に知らせず、頻繁に大金が引き出された」と主張したという。また、「元慰安婦たちに毎月350万ウォンの政府補助金が支給された事実も、自分たちには知らされていなかった」と話した。

 中央日報によると、同団体は「尹議員および正義記憶連帯とナヌムの家(慰安婦被害者とされる人たちの養護施設)に絡むスキャンダルを見て、実際の被害者である母親たちが疎外され、助けてもらえずにいることが分かった。李容秀さんを手伝って元慰安婦の方々を助けたいと思って結成した」と結成の背景を説明している。

 長年、慰安婦問題において絶対権力として君臨していた正義記憶連帯が奈落の底に落ちている最中、正義記憶連帯が独占してきた「被害者中心主義」という掛け声を挙げる新しい慰安婦団体が、雨後の筍のように出現するとみられる。

金昌成
韓国在住のジャーナリスト。韓国政財界や芸能界など幅広い分野で記事を執筆。来日経験も多く、日韓関係についても精力的に取材を行っている。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月22日掲載

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