「漫画村」摘発後も消えぬ海賊版サイト 『ラブひな』作者「はらわたが煮えくり返る」

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才能に取り付いたヒル

 本来、作家の創作活動のサポートをするのが本業の編集者が、一方で海賊版対策に忙殺されるという現状がある。

 しかし、もちろん、最大の被害者は、権利を侵害されるマンガ家自身だ。

「海賊版には、正直、はらわたが煮えくり返る思いです」

 と憤りを隠さないのは、『ラブひな』などのヒット作で知られる、マンガ家の赤松健氏。赤松氏は日本漫画家協会の常務理事で、「著作権部」の責任者も務めている。

「私の作品も、発売の翌日には海賊版にアップされている。4カ月かかって描いて、その苦労が台無しです。先日、最新刊が出た『鬼滅の刃』に至っては、当日にもうアップされていた。よく誤解されていますが、『リーチサイト』の『リーチ』とは『届く』という意味ではありません。『ヒル』(leech)です。作家の才能に取り付いて血を吸うという意味でも、まさに名は体を表していると思います」

 マンガの世界では、一般書籍以上に、電子書籍の売り上げの比率が増している。

「これまで海賊版は紙の本を裁断し、スキャンしてアップしていましたが、今は電子書籍を買って画面をキャプチャーして出すので、楽で早く、また高画質で綺麗になっている。これではますます読者がマンガを買わなくなってしまいます。今は電子書籍のみで出版するというマンガ家も少なくないので、彼らにとっては、より被害は甚大です。海賊版の影響で、売れない、儲からない。コンビニでバイトしている、廃業を考えている、という人もいます」(同)

 そして、こう続けるのだ。

「著作権というのは、表現者にとって、存在証明のようなもの。これを侵す行為は、文化への反逆と言ってもいいでしょう」

 最後に、里中さんが言う。

「海賊版を巡る議論の中には“一度、発表された作品だし、減るもんじゃない”“金目当てか”との誤解もあるようです。だから、これまでマンガ家も声を上げにくい環境にありました。でも、もう見て見ぬふりはできないということです。著作権とは、作者への敬意の表れであり、クリエイターのモチベーションの基盤。これが崩れては表現の世界が成り立たなくなってしまう。マンガなんてなくても生きていけますが、私たちが“生きることの意味”に気づくのは、何かに感動した時です。私たちが深みと歓びある人生を送るためにも、海賊版は許してはならないし、決して利用してはならないと思います」

「リーチサイト」の譬えにならえば、その「ヒル」たちを肥え太らせているのは、我々の安易なワンクリック。それが巡り巡ってこの社会や文化を破壊し、自らの身を細らせるということは、十分肝に銘じておくべきであろう。

週刊新潮 2020年6月18日号掲載

特集「著作権法改正だけでは『漫画村』は終わらない! 『マンガ文化』を死滅させる『海賊版』」より

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