中国製コロナワクチンは年内の救急利用を視野に…政府実施アンケートの闇も

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 コロナウイルスとともに暮らす“新しい生活様式”が発表されて約1カ月。先の見えない戦いにおいて、その突破口となり救世主となりえるのが、世界各国で進むワクチン開発だ。こうした中、イギリスの権威ある医学誌『ランセット』は、中国の研究チームの臨床結果を発表。108人の成人治験者にワクチンを投与し、安全性の高い抗体を生成させることに成功したという。

中国の識者「早ければ年内にも実用化」

 研究チームを率いるのは、人民解放軍に属する「中国軍事科学院軍事医学研究院生物プロジェクト研究所」の女性研究者、陳薇(チェン・ウェイ)氏。チームは3月中旬には中国政府の認可を受けて臨床実験を開始していた。今回の研究結果について陳薇氏は「重要な一里塚になった」と表明した。

 研究チームはすでに2回目の臨床実験を行っており、508人の治験者にすでにワクチン投与を行っている。陳薇氏は「今回の結果はワクチン開発の希望を示すことはできたが、すべての人が使えるようになるまでには、まだ長い道のりがある」と説明した。

 武漢大学医学部ウイルス学研究所の楊占秋教授も「すべての治験者から免疫反応が得られたということは、ワクチンの設計は成功したと言える」と評価。だが、「ワクチンはウイルスを制御する強力な手段ではあるが、それでコロナが終息するとは限らない。ワクチン完成後も、冬になれば再びコロナが蔓延する恐れはある」とも語っており、楽観視はできないとの見解を示した。

 現地識者によると、今後3~6カ月ほどかけて3回目の臨床実験を行い、早ければ年内にも救急利用が可能になる見込みだという。メイド・イン・チャイナのワクチンというと少々恐ろしいイメージもあるが、安全性に問題がないことを祈るばかりだ。

 ワクチン開発が進むなか、政府機関「中国疾病予防コントロールセンター」はワクチンに関するネットアンケート調査を開始。性別や年齢、最終学歴のほか、月収の回答欄もある。ちなみに、月収は次のように分かれていた。

「3000元(約4万5000円)以下」
「3001元~5000元(約4万5001円~7万5000円)」
「5001元~1万元(約7万5001円~15万円)」
「1万1元~2万元(約15万1円~30万円)」
「2万元以上(約30万円)以上」

 中国人というと富裕層のイメージが強いが、国全体としては、月収「5001元~1万元(約7万5001円~15万円)」程度を”中の中”と想定しているようだ。このアンケートでは配偶者や子供の有無、基礎疾患の有無といった基本情報に続き、コロナの知識をテストされる。ウイルスの感染経路や自主隔離の必要性について問われた上で、中国国民のコロナへの危機意識も調査している。

「新型コロナウイルスの危険性はどのぐらい深刻だと思いますか?」
「自身がコロナに感染した場合、身体や精神への苦痛はどのぐらいあると思いますか?」
「自身がコロナに感染した場合、家族への負担や苦痛はどのぐらいあると思いますか?」
「コロナの蔓延が続いた場合、自分が感染する可能性はどのぐらいあると思いますか?」

 それぞれに「すごく思う」から「まったく思わない」まで5段階で回答する仕組みだ。危機意識の強さに応じて、外出制限などの度合いを調整するのかもしれない。

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