数千万円の最先端医療! 「京アニ放火殺人犯」を生き長らえさせる意味

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熱中症のおそれが

 犯罪史上稀な凶悪犯にもかかわらず、膨大な公金をつぎ込み、一般人には手の届かないような最先端の高額医療で救命せざるを得ないジレンマ。それは、逮捕後もなお周囲を苛むことになりそうで、この捜査関係者いわく、

「勾留先は、設備の老朽化が進む京都拘置所ではなく、医療体制が充実している大阪拘置所になりました」

 というのも、熱傷専門医の百束比古(ひゃくそくひこ)・日本医大名誉教授によれば、

「(青葉容疑者は)10カ月にわたって寝たきりだったため、全身の瘢痕拘縮のみならず、下半身の筋肉は衰えて体を支えられずに手もうまく使えず、機能しているのは脳と眼、また発声、飲食あるいは呼吸を司る口腔だけだと思われます。すでに全身の汗腺もほとんど失われているでしょうから発汗障害があり、夏場などは熱中症にも罹りやすくなります」

 つまりは空調完備の個室でなければ、命に危険が及ぶというわけだ。それゆえ、

「これまで大阪拘置所には車いす対応の居室はありましたが、今回、青葉の収容に備えて、エアコン設置をはじめ、ストレッチャーや介護ベッドを入れられるように居室や面会室を改修しました。また、医師や看護師も増員し、24時間態勢で対応できるようにしています」(前出・捜査関係者)

 こうした改修費用だけでも100万円近くかかったというから、まさしくVIP待遇である。

 先の社会部記者いわく、

「青葉には現在、刑事の専門家である遠山大輔弁護士らが国選でついています。2008年に起きた舞鶴女子高生殺害事件で逆転無罪を勝ち取った人権派の敏腕で、青葉の刑事責任能力の有無をはじめ、殺人ではなく傷害致死を主張するなどして攻めてくるでしょう」

 青葉容疑者の体調如何では公判の順延も大いにあり得る。元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士が言う。

「本件は裁判員裁判のはずですから、裁判員の方の混乱を招かないよう公判前整理手続で争点を明確にする必要があります。(青葉容疑者の)弁護人としては、予想外に火が広がってしまったのか、あるいは誰がやっても同じように火が広がるのかという部分も検証しなければならない。そうした状況を把握した上で戦い方を練る必要があるので、本人の体調以前に準備には時間がかかる。初公判は早くとも半年先ではないでしょうか」

 近大病院で容態が回復した後、病床で青葉容疑者は「どうせ死刑だから」「(延命は)意味がない」と言い捨てた。遺族のためにも法廷で真実を語らせ、相応の罰と向き合わせるべく生かされているのだという“意味”を、はたして理解しているのだろうか。

週刊新潮 2020年6月11日号掲載

特集「『最先端治療』『VIP待遇』に血税ウン千万円! それでも『京アニ放火殺人犯』を生き長らえさせる意味」より

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