黒いカレーで60年「神保町 キッチン南海」が閉店 90才社長が語る“我が人生”

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あと5年は働く

南山:料理の勉強はしていないんだよ。だからカレーだって、自分が信じて作っていたら黒くなっただけ。でも最初のうちは、「こんな真っ黒なのはカレーじゃない!」と怒って帰っちゃう人もいたなあ。それが、学生の頃に通っていましたと言って来てくれるようになった。

――カレー激戦区として知られる神保町で、60年生き抜いた店がなくなることについては?

南山:サラリーマンだって働けるのは、せいぜい40年でしょ。それが60年も続けることができたんですから、残念なんて言ったら贅沢ですよ。いい潮時です。でも、あの建物が僕と同い年だとは思わなかったなあ……。

――「キッチン南海」を運営する株式会社南海はどうなるのか。

南山:唯一の店舗が神保町店だったわけだから、会社もなくなるんだろうね。

――「キッチン南海」の味は、現在の料理長・中條知章氏(52)が今後、独立。同じ神保町に店を構えることで受け継がれるという。

南山:妻方の甥っ子に当たるんだけど、彼はうちで10年どころか30年も働いてくれた。これが最後ののれん分けだね。頑張ってくれるといい。

――社長は今後、どうするのか?

南山:体は元気ですよ。若い頃から風邪一つ引いたことがないからね。熱があるという状態が分からないくらい。健康法を教えましょうという医者もいたけど、彼らのほうが先に死んじゃうからねえ。まあ、あと5年は働きたい。何をやるかは話せないけど、新しいことを始めたいと考えてる。それと、各地の「キッチン南海」を見て回りたいね。みんな元気かな。腰を痛めているから、電車に座っているのは無理。だから、バイクで……。

 齢90にしてますます盛んである。

週刊新潮WEB取材班

2020年6月9日掲載

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