「コロナ給付金」200万円は欲しいけど課税はイヤ…お坊さんたちの銭闘

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「日本仏教の代表者」のような顔でロビー活動

 全日本仏教会(全日仏)とは、浄土真宗本願寺派や曹洞宗、日蓮宗、天台宗などなど、日本の主だった伝統仏教宗派でつくる連合団体。こことて「偉い人たちの親睦団体」以上の組織ではなく、加盟各宗派に何かを命令するような権限は持っていない。

 ただ同会がまず独走的に動き、「宗教法人へも給付金を」というロビー活動につながっていったと語る僧侶たちの声が複数ある。

 かつ、この問題をマスコミが最初に取り上げたのは、5月14日放送のテレビ東京「昼サテ」なのだが、アナウンサーは「複数の政権関係者によりますとコロナの影響で葬儀などが大幅に減り、経営が苦しい寺などが増えていることが背景にあるということです」と語り、神社でも教会でもなく「寺の救済」がまず念頭にあったことをうかがわせる。

 全日仏関係者はこれと前後して、自民党文教族の重鎮・伊吹文明衆議院議員に働きかけを行ったらしいのだが、伊吹氏は「無理がある」と難色を示した(週刊新潮6月4日号)。
 しかしその後も全日仏関係者らは、与野党問わず複数の国会議員に、遅くとも来年には行われる総選挙への協力もちらつかせながらロビー活動を展開。結果、自民党総務会で審議されるところまではこぎつけることができたのだという。

 もっとも、全日仏のこの活動とて日宗連の「要望」と同じく、加盟宗派への根回しを欠いていたという。今回、複数の伝統仏教宗派の幹部に話を聞いたのだが、「全日仏から給付金要求のロビー活動に関し、事前にきちんとした説明を受けていた」と語るような関係者はほとんどいなかった。ある伝統仏教宗派の幹部はこう言う。

「確かに地方の小さなお寺などはコロナ禍で本当に困っていて、200万円はぜひ欲しいといった声もある。しかしそれがすべてでもなく、憲法問題にも抵触するテーマ。『善は急げ』と思ったのかもしれないが、そういう状況下で全日仏が『日本仏教の代表者』のような顔で、独走的に政界へのロビー活動を展開したことは問題ではなかったか。加盟宗派のなかには、全日仏執行部へきちんと抗議したほうがいいと言うところもある」

 なお今回、日宗連と全日仏に取材を申し込んだのだが、日宗連からは期日までに回答がなかった。また全日仏からは「日本宗教連盟幹事会で協議を重ね、各方面へ意見を述べさせていただいた」とのみ、文書で回答があった。

小川寛大(おがわ・かんだい)
雑誌『宗教問題』編集長。1979年、熊本県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。宗教業界紙『中外日報』記者を経て現職。著書に『神社本庁とは何か』(K&Kプレス)など。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月9日掲載

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