アフターコロナの飲み会リスク(中川淳一郎)

国内 社会 週刊新潮 2020年5月21日号掲載

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 なんてこった! 月に20回は外で酒を飲んでいた私なのに、3月19日を最後に一度も飲み会がありません。随分変わってしまったなァ……と遠い目をしながら、今回はコロナ後の飲み会ライフがどう変わるか予想してみます。

 外出自粛のGW、担当編集のF氏は、酒ばかり飲んでいたとボヤいていましたが、私も仕方なく家で飲んでいました。すると、「ありゃ? 家飲み楽しいじゃん! 外で高いカネ払って飲まなくてもいいんじゃね?」という気持ちになってしまったんですよ。

 大体1日に500mlの缶ビールを5~6本飲んでいたのですが、これが1200円~1500円。ツマミ代は200円ほど。この量の酒とツマミを外で頼んだら4500円ぐらいはするわけで、節約にもなった。

 とはいえ、やはり仕事仲間や友人と酌み交わす酒は娯楽の王様。コロナ禍明けには、きっと飲み会文化は復活すると思います。でも、これまでとは作法がガラリと変わるはず。例えば居酒屋では、これまで各自が自分の箸でポテサラやらホッケの干物を取っていたのですが、「取り箸」を使うことが常識になるでしょうね。

 予約をした場合なら、テーブルの中央に菜箸が置かれるようになる。テーブルの箸入れから割り箸を取るタイプの大衆居酒屋であれば、誰かが箸をパキッと割り、最初にやってきた皿にのっけて、各人がこれを使って取るようになる。唐揚げのように、一つ一つのピースが分かれているものまでも、“それがマナーだから共有割り箸を使用すべし”、という同調圧力が生まれるかもしれません。

 これでもまだ抵抗感があるグループも存在するでしょう。かなりの潔癖症の人が混ざっていた場合です。この場合、「各自一膳」の取り箸になり、店の割り箸消費量が2倍になる。

 これまでも「マグロの山かけ」のようにネバネバしたものや、「モツ煮」のような汁っぽいものを皆で分け合う場合、「この手のものに皆が箸を突っ込むのは抵抗ある」という人がいて、取り箸や蓮華を頼むことはありました。こうした感覚の人が激増するのでは。

 あと、鍋料理は敬遠されるようになるかもしれません。さらにはお酌もなくなり、日本酒は1人1合ずつ自分の前に置き、瓶ビールも1人1本。会計時も現金のやり取りを避けるべくLINE Payなどを使って決済する。テーブルとテーブルの間には、アクリルやビニールの仕切りが下げられ、「個室居酒屋」のニーズが高まりまくる。

 こうした状況になると店側の負担が多くなることは間違いありません。しかし、もっと問題なのは「飲み会はリスク」といった空気が蔓延することです。

 ネットを見ていると、飲み会が大嫌いな人、いや、憎んでいる人々の、飲み会に対する怨嗟の声が多数書き込まれていました。「会社の飲み会は無駄。残業代出せ」といった形で。

 こうした方々は元々飲み会嫌いだったのでしょうが、飲み会から仕事が生まれることも意外と多いわけで、私は「飲み会はリスク」という空気が蔓延することこそが、リスクだと捉えています。ただ、カウンターが推奨されるだけにサシ飲みが流行り、恋愛は活発化するかもしれませんが。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。