コロナ禍で「自殺者27万人増」の驚愕シミュレーション 補償なき安倍政権の見殺しで

国内 社会 週刊新潮 2020年5月21日号掲載

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安倍内閣よ、「財政規律」より「国民の生命」を守れ!

 ところで、こうした経済危機に伴う自殺は、政府による経済対策で大幅に軽減できるにも拘わらず、安倍政権は十分な対策を打とうとしていない、という点は強調しておかねばならない。これはつまり、国民は今、安倍政権に「見殺し」にされつつあることを意味している。

 そもそも我々の自殺者数シミュレーションは、今回の117兆円の緊急経済対策なるものを前提としている。安倍内閣はこの対策が「世界最大級」だと胸を張るが、その中身の実態は先進国の中では「世界最小級」だ。一般に政府自身が赤字国債などで調達し政府の財布から支給する資金のことを「真水」というが、国内に振り向けられる真水はこの117兆円の内わずか25兆円しかない。アメリカは既に300兆円の真水を決定しているが、日本のそれはその僅か12分の1しかないのだ。

 しかも、その予算執行は、何と5月からだ。諸外国の給付は、感染者が出たのが日本よりもずっと遅かったアメリカですら4月中旬からだった。欧州諸国もほぼ同時期に給付を開始しており、スピードにおいても規模においても、日本は欧米諸国に著しく見劣りするのである。

 それもこれも財務省に籠絡された安倍内閣が、「国民の生命」ではなく、プライマリーバランス(基礎的な財政収支、政府の収入と行政支出の差額)黒字化という「財政規律」を守ることを圧倒的に優先しているからだ。本来なら、少なくとも速やかに消費税凍結を含めた100兆円規模の真水の支出が必要不可欠な状況なのだが、そうした議論が永田町から一向に聞こえてこないのは、こうした事情があるからだ。

 その結果、我々日本国民は今、新型コロナウイルスで命を落とす以前に、財政規律を死守する政府によって殺(あや)められかねぬ状況に置かれている。我々日本人は「平和ボケ」だと長らく言われ続けてきたが、そろそろ目覚めなければ、自分たちの生活はもちろんのこと、命すら失うことになるのである。

 一人でも多くの日本国民の「覚醒」を期待したい。

藤井聡(ふじいさとし) 京都大学大学院教授 元内閣官房参与
1968年奈良県生まれ。京大卒。イエテボリ大客員研究員、京大大学院工学研究科助教授、東工大大学院教授等を経て現職。専門は公共政策論。著書に『強靭化の思想』『プライマリー・バランス亡国論』等。

特集「『コロナ』見えすぎる敵」より

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