新型コロナ重症例でも効く科学的根拠は? 「レムデシビル」とその次の候補薬について

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厳しい状況から救えるか「アクテムラ」

増富:前述した「RdRP」を標的とするお薬は、感染初期の早い段階から使用することでウイルスの増殖を抑え込むという理屈でした。一方で、アクテムラは重症化して全身状態が厳しい状況から救える可能性は十分にあると思います。新型コロナウイルスによる死亡例は「サイトカインストーム」という、免疫応答の過剰反応による多くの臓器不全が原因と考えられています。

 現在行われている、基礎研究と重症COVID-19患者を対象にした臨床試験の結果を見守る必要がありますが、別の疾患で「サイトカインストーム」からの「救世主」となった実績のあるお薬ですから、作用機序から考えても特に重症化してしまった患者さんには効果の可能性は十分にあると思います。

大場:アクテムラは、免疫応答で発動される炎症性サイトカインという物質の中でも、IL(インターロイキン)-6を標的として抑える薬ですね。また、血液がんの免疫療法としてCAR-T(キメラ抗原受容体導入T細胞)療法というものが注目を浴びていますが、その重篤な副作用である「サイトカイン放出症候群」にも使用される重要な薬です。

 軽々しく免疫といっても、免疫応答の「過剰反応」はとても怖い病態だということです。それに似た現象が、COVID-19重症化患者にも起きているわけですね。

 本来、ゴールとしてもっとも大切な重症化患者を救い、死亡者数を極力減らすという意味では僕も期待している薬です。もちろん、レムデシビルの開発も、対象が中等症~重症の患者さんが中心ですから、試験結果の全貌が早く明らかになって、効果が証明された場合にはいち早く困っている患者さんのもとに届いてほしいと願います。

大場大(おおば・まさる)
1999年 金沢大学医学部卒業、2008年、医学博士。2016年より東京オンコロジーセンター代表を務める。2009年-2011年 がん研有明病院。2011年-2016年、東京大学医学部附属病院肝胆膵外科。2019年より順天堂大学医学部附属順天堂医院肝胆膵外科非常勤講師。専門は、外科学、腫瘍内科学、消化器病全般。

増富健吉(ますとみ・けんきち)
1995年 金沢大学医学部卒業、2000年、医学博士。2001年-2007年 Harvard大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。専門は、分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年5月7日掲載

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