私はこうして「コロナ肺炎」から生還した 罹患者たちの肉声

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 ついに日本の感染者数も1万3千人を突破したが、当然ながら、そこにはそれぞれの“闘病”がある。新型肺炎から生還した人々が、生命の危機と隣り合わせの体験記を明かす。

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〈2週間前、友達の知り合いがコロナになったんだけど、友達は濃厚接触者だった。僕は何も知らずその友達といっしょにクラブに行った。これがコロナになるきっかけだった、、、。〉

 都内でWEB広告の代理店を営む男性(37)が、“コロナ闘病中”を名乗ってツイッターを始めたのは今月2日のことだった。ご本人が振り返るには、

「3月13日の晩に、友達8人と麻布のクラブに繰り出したんです。そのうち4人が感染して、僕に症状が出始めたのは2週間後の3月26日でした」

 当初は、喉に違和感を覚えた程度で、他に症状もなく、味覚や嗅覚に異常はなかったという。しかし、

「翌27日に38・1度の熱が出まして。それからは朝方こそ36度台に下がるものの、徐々に熱が上がり、夜には39度台に達するという日々が続きました。その頃には味覚も嗅覚もほとんどなくなり、鈍器で殴られているような“ズーンズーン”という鈍い頭痛に襲われた。関節の痛みも酷くて夜中に何度も目が覚めてしまう。さらに苦しかったのは腰痛。腰が服の生地に触れるだけで痛みが走るんです。まるで千本の針で刺されているような感覚でした」

 ただの風邪とは明らかに異なる症状に不安を募らせた男性は、29日に保健所に連絡を入れている。

「一緒にクラブを訪れた友達が、すでに陽性と診断されていたので、“クラスター感染かもしれない”と告げたところ、すぐに検査を受けることになりました。港区の保健所に着くと、コロナの疑いがある人は建物のなかに入れないということで、屋外で喉に綿棒を突っ込まれてPCR検査を受けることに。結果が出るまで2、3日かかると言われたので、とにかく自宅から一切出ないようにしました」

お風呂に頭を…

 だが、その間にも症状はどんどん悪化していき、

「体の寒気はひかないのに、頭だけが沸騰したお湯をかけられたみたいに熱いんです。高熱のせいで顔は真っ赤になって、目も赤く血走っていましたし、お風呂に水を張って、そこに頭だけ突っこんだことも。検査結果が出るまでの3日間は、本当に地獄のような日々でした。これが体力のないお年寄りだったら命を落としかねないと思います」

 保健所から電話があったのは4月1日。“陽性”と告げられた。

「とにかく症状が酷かったので、陽性と聞いても“やっぱりな”という感想しかなかったですね。その日の午後から港区内の病院に入院。病室は6畳ほどの個室で、トイレとシャワーが付いていた。その後、CT検査を受けたら両方の肺が肺炎になっていましたね」

 扁桃炎や気管支炎に効果のあるロセフィンを点滴で打つと、入院2日目から熱が下がり始めたという。

「代わりに空咳が出るようになりました。息苦しいのでお茶がほしくなるんですが、ナースコールは押しづらい雰囲気がありましたね。看護師さんは病室に入るたびに防護服を着なければいけないので……。高熱がひいた一方、味覚や嗅覚はなかなか戻らず、何を食べてもほとんど味がしなかった。かろうじて梅干しの酸っぱさが分かる程度でした」

 入院から1週間後にPCR検査を受けたところ、結果は陰性。翌日の検査でも陰性と診断され、男性は退院することができた。

 他のコロナ患者に取材しても、高熱や味覚障害、空咳といった初期症状は共通している。とはいえ、同じ症状でも人によって異なる点があるのも事実だ。

 同じく、コロナに感染した関西在住の40代男性は、3月末に38度近い熱に見舞われたのだが、

「翌朝には36・2度まで熱が下がっていた。他に目立った症状もなく、味覚も嗅覚も正常でした。それにホッとして、いつも通り出社したのです。ただ、その翌日になって熱がぶり返し、それ以降は咳と激しい下痢に襲われました」

 コロナによる新型肺炎の場合、一旦熱が下がり、症状が治まっても、そこから一気に悪化するケースは珍しくない。

 幸い、この男性はその後、症状が改善している。

「私は入院することができずに自宅療養を続けていたので役所から毎日、体調を確認する電話がありました。そして、今月18日に就業制限が解除され、どうにか仕事に復帰することができた。後日、解除通知書が郵送されてくるそうです」

 また、コンサルティング会社「Globality」CEOで、都内在住の渡辺一誠さん(40)も先月中旬に発症し、

「一度咳き込むと、堰を切ったように痰の絡まない空咳が続くので全く眠れませんでした。インフルエンザの30倍くらい苦しかった」

 と闘病生活を振り返る。今月10日に退院したが、

「いつ、どこで感染したのか、いまだに見当がつきません。仕事は基本的にオンラインで、取引先と会うのも週に1回程度。プライべートでは特定の友人としか行動しない。もともと潔癖気味なのでエレベーターのボタンも素手では触りません。そんな私が感染した以上、誰が感染しても不思議はないと思います」

 あなたが“陽性”と診断される日に備え、彼らの体験を胸に刻んでもらいたい。

週刊新潮 2020年4月30日号掲載

特集「『コロナ』生死のカギ」より

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