【新型コロナ】山田ルイ53世が語る ライブ中止で苦境に立たされる「一発屋芸人」は生き残れるのか

エンタメ 芸能 2020年3月26日掲載

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 新型コロナウイルスの感染拡大により、エンタメ界への経済的ダメージが深刻化している。ここ数年、「霜降り明星」や「EXIT」など、第7世代ブームで活気を帯びていたお笑い界も、その影響は甚大。予定されていたライブイベントの延期・休止が相次ぎ、ピン芸人日本一を決める「R-1ぐらんぷり2020」決勝も無観客での開催となった。

「テレビやCMだけで食べているのは、ほんの一部」というお笑い界で、この新型コロナ渦の中、地方営業がメインの芸人たちは生き残れるのだろうか? 『一発屋芸人列伝』(新潮社)の著者で、お笑いコンビ「髭男爵」の山田ルイ53世さん(44)に話を聞いた。

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「乾杯営業」と新型コロナ

 当然、影響は大きいです。“食える”ようになるのはひと握りと言われるこの業界で、TV出演などメディアの仕事だけで成り立っている人間はさらにひと摘み。その他は多かれ少なかれ、地方営業やイベント仕事をこなしている。それがなくなれば、収入減どころか、場合によっては、まったくのゼロというケースもあるでしょう。

 特に今回は、自粛の理由が理由ですし、政府が控えてくれと言うのも重々理解出来る。

 まあ、仕方がない。最近、人々の警戒心が少し緩んでいるように感じ、心配しているくらいです。とはいえ、キツイはキツイ(笑)。先日、とある現場の楽屋でも、「本当に困ってる」と、ため息を吐く芸人仲間の姿をチラホラ見掛けました。

 勿論、人ごとではありません。

 我々「髭男爵」の場合、「乾杯」「ワイングラス」というイメージが強いせいか、地方営業案件の中でも、企業の○○周年パーティーや結婚式などの“お目出度い場”、酒席からお声が掛かることも多いんです。大勢の人が一つの部屋に集まる会場は周りがうるさいので、皆近付き、大声で喋らねばならない。僕たちの方も、「ルネッサーンス!」「○○やないかーい!」と全力でネタをやる。飛沫の銃弾が飛び交う戦場と言ってもいいでしょう。専門家会議が警鐘を鳴らす、「クラスターが発生しやすい条件」にピタリと当て嵌まってしまうわけです。

 当初、「こういう場所は避けて下さい!」と専門家の方々が例示した場所、そのほぼ全てで「ルネッサンス」したことがあることに気付き、そんなわけは無いのですが、「これ、ウチら狙い撃ちやないか!」と暗澹たる気持ちになりました。結果、向こう1カ月の営業は、ほぼなくなりましたね(笑)。

 お花見の時期から、GWにかけて、そういう仕事が増えていくタイミングなので、打撃なのは間違いないですが、まあ、芸人に限らず、皆同じ状況。もっと大変な人たちも沢山いる。

 大体、「ルネッサンスでクラスター発生」では、シャレにもなりません。

「一発屋芸人」は不況に強い

 ただ、僕の書いた『一発屋芸人列伝』に登場する方々は、実は常日頃からリスクヘッジができているタイプが多いように思う。「人気の絶頂→一発屋」という、どん底を味わった彼らの“転落”の下げ幅は、漏れなくリーマンショック級と言っていい。苦渋を舐め尽くしているので、ネタを披露する本芸の一本槍ではなく、色々試みた結果、副業というか、営業以外の仕事を持っているケースも少なくないのです。

 例えば、ムーディ勝山君は、これまでも「ロケバスドライバー」「面白インスタグラマー」等、様々な面を披露してきましたが、今は「マンガ大好き芸人」としての注目も加わり、ラジオの仕事なんかも増えています。あの無茶苦茶(に見える)なコウメ太夫さんは、昔からアパート経営の副業が順調ですし。「一発屋芸人」として今も生き残っている人間にとっては、(仕事面だけで言えば)今回の新型コロナのようなピンチは初めてじゃない。メンタルも含め、間違いなく不況に強いと言えるでしょう。

 かくいう僕も、ラジオパーソナリティーやナレーション、執筆業で連載オファーを頂いたりと、まあ細々とやっております。

 あくまで、細々とですが(笑)。

芸人にとって、無観客はしんどい

「R-1ぐらんぷり2020」の決勝(3月8日)は無観客での開催となりました。

 一発屋が触れるのもおこがましいですが、ネタを披露した方々は苦労されたと思います。ちょっと「間」を取るタイプのネタとか、あまり声を張らない芸の人などは、特にやりにくかったでしょう。改めて、お笑いって、お客さんの笑い声とセットなんだなと、思い知らされました。

 東日本大震災の時も、お笑いのライブの自粛とか中止がありましたけど、あれはあくまで「ムード」の部分が大きかった。最初のうちこそ「こんな時期にお笑いなんて不謹慎だ」という意見が目立っていましたが、ほどなく「こういう時だからこそ、お笑いが必要だ」「自粛・不謹慎狩りは良くない!」といった有難い声も聴こえるようになってきて、少しずつ状況が落ち着いていった。でも今回は、人が集まること自体が感染のリスクを拡大させる。お客さんにそんなリスクを負わせることはできないし、現時点で確率は高くはないとのことですが、死に至る可能性がゼロじゃないというのは妙な物言いですが“致命的”。感染症の恐ろしさです。

ライブ会場の方が死活問題

 僕は芸人以上に、会場のライブハウスを経営されてる方や、イベンターさん、そして裏方の方々を心配しています。

 ワイドショーにコメンテーターとして出演する機会があるのですが、とある番組の収録前、大道具さんと話していると、「(その大道具さんの会社では)イベントの仕事がまったくなくなった」と嘆いておられました。その方によれば、ライブ用に機材をレンタルしている会社なんかも深刻なようで、このままだと資金繰りが立ちゆかなくなり、軒並みヤバイ状況だとのこと。

 芸人の方は、たとえ無観客だとしても、ネットでお笑いライブの配信をしたりと、何かしら手立てはある。でも、ライブハウス、裏方さん、そしてイベンターさんは本当に厳しいと思います。潤沢な資金で回しているところなんてそうはない。

 とにかく、一日でも早い感染症の終息を願うばかりですが、そうなった時、舞台を作ってくれる沢山の方々がいないのでは、どうにもなりません。

 公立の小中学校が一斉に休みになりましたが、休校1週間目で、うちの小1の娘は、リビングで創作ダンスを踊り始めました。早過ぎます。

 何よりゾッとしたのは、先日、営業の仕事がキャンセルになって自宅にいる僕に向かって、「パパも休校?」と尋ねてきたこと。

 何かの皮肉でないことを祈るばかりです。

デイリー新潮編集部