新型肺炎発の韓国の通貨危機 米国の助けも不発で日本にスワップ要求…23年前のデジャブ

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IMF経由でコントロール

――しかし、韓国を助けないとウォン安がどんどん進みます。

鈴置:ウォンが下がり続ければ、デフォルトを起こします。それを避けるため、韓国はIMF(国際通貨基金)に救済を求めざるを得なくなります。韓国はIMFの指導下に入るわけです。日本は米国と図って、IMFを通じウォン安を阻止すればよいのです。

 ちなみに1997年の通貨危機の際、韓国を救済したIMFは高金利政策を実施させました。すると、ウォンは急速に価値を取り戻しました。ウォン安・円高がもっとも進んだ時でさえ1円=13ウォン強。それも瞬間風速でした。

 高金利のために、倒産する企業が多発しました。通貨安を背景に輸出しようにも、モノを作る会社の数が減ってしまったのです。

 韓国をIMF救済に追い込めば「ウォン安の脅威」はむしろ減少するのです。この辺の機微をなかなか政治家や財務官僚は理解できない。マーケットというものを知らないのか、韓国から鼻薬を嗅がされているのか……。

キーセン外交でスワップ獲得

――「鼻薬」ですか?

鈴置:中央日報は「韓国が厄介な隣国と生きていく姿勢」(2017年1月11日、日本語版)で「日本の財務官僚など頭をなでてやれば通貨スワップだって結ぶ」との趣旨の記事を乗せています。

 韓国の財務官僚の談話を引用しながら書いた記事で、彼らは「論介(ノンゲ)戦術」と呼んでいるそうです。

「論介」とは文禄・慶長の役の際、日本の武将を道連れに川に飛び込んで死んだキーセンの名です(「蟻地獄に堕ちた韓国経済、『日本と通貨スワップを結ぼう』と言い出したご都合主義」参照)。

「キーセン・パーティで釣れば、日本の役人など言いなりになる」と理解した韓国人も多いでしょう。韓国史を知る日本人が読めば「ここまで馬鹿にされているのか」と嘆息するでしょう。

「百害あって一利なし」のスワップ

――韓国との通貨スワップは日本にとって「百害あって一利なし」なのですね。

鈴置:その通りです。極めて大きな経済的損害を受けるし、外交的にも「なめられる」からです。日本人は「スワップで助ければ、韓国はその好意を感じてくれ、関係も改善するだろう」と思い込んできた。

 でも、現実は正反対。「スワップさえもらえばこちらのもの」とばかりに、韓国は日本の足を引っ張りに来ます。韓国は「恩を仇で返す」国なのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年3月24日掲載

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