新型コロナとの正しい付き合い方 根拠なきイベント自粛は意味なし、周知徹底し開催を

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大相撲、甲子園も問題なし

 イベントの自粛で電車やバスでの移動が減り、予防効果がある、という声もありますが、あまり納得できません。電車やバスの車内では、2メートル以内に感染者がいなければ、飛沫による感染はありません。電車には換気システムがあり、特に大都市ではドアの開け閉めも頻繁なので、周囲にせきをする人がいるときにマスクをすれば大丈夫。ただし、手すりなどにつかまるので、手指消毒は必要です。

 大相撲も、会場が広いので無観客にする必要はありません。甲子園の高校野球も同様で、若い来場者が多いのでなおさら問題ありません。応援で声を出すので、症状がある人は来ない、ということを徹底する必要はあります。しかし、それさえできれば、ほかの高校スポーツの大会も、屋内であっても会場が広ければ、開催して問題ないと思います。

 韓国やイタリアで感染者が急増しましたが、狭い空間で、換気が悪く、人が多数集まって、長時間滞在し、叫ぶ、という条件がそろった環境が、あちこちにあったのかもしれません。

 とにかく、根拠のない自粛は意味がありません。自粛しないと、「なぜ開催したんだ!」と文句をつける人がいますが、専門家がそういう部分にまで助言するといいのかもしれません。せきや熱や倦怠感などの自覚症状がある人は来ない、ということを周知徹底すれば、開催できるのです。

〈安倍総理が「1、2週間が感染拡大防止に極めて重要」だとして、イベント自粛を要請したのが2月26日だった。が、現在も見通しは開けず、プロ野球の開幕延期も決まった。〉

 プロ野球の試合も、行って問題ないと思います。そもそも「1、2週間」に根拠はなく、総理はどう言い訳するのでしょうか。現実には政府は、手洗いを啓発し、少しでも症状があれば外出しないということを周知徹底する以外、打つ手はないはずです。一般の人も、しばらくはせきや熱、倦怠感などの自覚症状があれば外出を控え、注意しながら普通の生活を送る。それ以外にありません。

 新型コロナウイルスは想定したほど恐れる必要がないとわかってきました。2009年の新型インフルエンザのとき、死亡率が低いとわかってからも過剰な対策を緩めず、のちに反省したはずでした。それなのに同じ轍を踏んでいます。

 早めに「風邪のウイルスだ」と宣言し、ターゲットを絞った対策に切り替えてほしいです。いったん自粛が始まると、経済的打撃は計り知れないのにやめられないのは、ウイルス以上にやっかいな現象ではないでしょうか。

週刊新潮 2020年3月19日号掲載

特集「『新型コロナ』との正しい付き合い方――矢野邦夫(浜松医療センター副院長)」より

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