「五輪後」まで売るのを待つべき家の特徴 頭に入れておくべきリスクとは

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5千万円が必要

 逆に、エキチカの物件に住んでいるなら焦る必要はない、とは先の長嶋氏で、

「都心だろうと郊外だろうと、駅に近い物件は高値を維持するでしょうから、今はまだ手放さない方が吉と言える。駅に至近の物件は絶対数も限られますので、都心部のマンションであれば、築40年を過ぎた物件でも買った当時より高く取引されるケースもあります」

 もっとも、自宅を売るか否かで忘れてはいけないのは、「災害リスク」である。昨年の台風19号で、武蔵小杉のタワーマンションが水没して、大きな被害を受けたことは記憶に新しい。

「今年4月から、楽天損保は水害リスクが高いか低いかで、保険料に変化をつけると発表しました。今後は、災害発生リスクのある家は価値が低いと見なされる可能性もあります。例えば、海抜ゼロ地帯を含む江東5区(墨田区・江東区・足立区・葛飾区・江戸川区)に住んでいるのであれば、自分たちの安全や子供たちに遺すということを考えても、家を処分して引っ越すのが賢い選択だと思います」(同)

 めでたく我が家を売却できても、「ダウンサイジング」へのハードルは高い。

「60代半ばから70代のご夫婦が都心に住み替えるなら、新居の購入費や老後の生活費を合わせて5千万円くらい必要です」

 と解説するのは、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏だ。

「都心で交通の便がいい住まいを買おうとしたら、最低でも4千万円くらいが相場です。今のお住まいが、都心から1時間前後の郊外で駅に近くない物件なら、たとえ売れても二束三文。1千万円くらいにしかなりません。そうなれば、差額の3千万円は貯蓄を取り崩すなどして用意する必要がある。また一般的なマンションを購入すれば、修繕積立金や管理費などが月3万円ほどかかりますから、平均余命の20年生きるとすれば720万円。さらに、20年も住めば水回りも傷むので修繕費に約200万円かかる。また都心部だと物価も高くて年金だけでは賄いきれない。だいたい夫婦で月3万円ほど不足すると想定されますから、20年の間の生活費として720万円ほど余計にかかる計算になります」

 さらに、医療費や旅行などの遊興費も財布から出ていく。余程の資産を持ち合わせていないと、都心への「ダウンサイジング」は現実的ではないとして、深野氏はこんな処方箋を示す。

「都心部を避け、埼玉や千葉などの政令市クラスの大きな街なら、駅に近いマンションでも2千万円程度で済む場合がある。都心に住むより、必要な費用も半分ほどとなれば、老後の負担も少なく暮らせます」

 一生に一度の大きな買い物だと、苦労の末に手に入れた我が家である。「五輪前」の最終判断は慎重に……。

週刊新潮 2020年2月27日号掲載

特集「自宅を売るか否か『五輪前』の重大決断」より

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