「カープ女子」が激減…人気に陰りか? 広島キャンプで見えた“異変”とは

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 ブームもようやく落ち着きを見せ始めた、といったところか。広島カープの春季キャンプの観客数が減少の傾向を見せている。カープの日南春季キャンプは、25年ぶりのリーグ優勝を果たした2016年頃から観客数が激増。そこからチームは球団史上初となるリーグ3連覇を達成し、キャンプが行われる宮崎市日南市の天福球場のスタンドには人があふれた。昨年は巨人のスター選手だった長野久義の移籍もあり、キャンプ最初の土日で2日合わせて1万2500人の観衆が集まった。

 今年はキャンプ初日が土曜日で天候にも恵まれたが、観客数は4000人と予想されたほどではなかった。気温も上がり、晴れ間が広がった日曜日も5500人で、2日間の合計は前年と比べると3000人の減少になった。18年最初の土曜日の4500人から見ても、今年は微減ということになる。

 毎年、キャンプ取材に訪れるという地元マスコミ関係者が、昨年までとの違いを話す。

「練習中にシート打撃などの時は、報道陣もスタンドから見ることがあるのですが、昨年までは週末ともなると、席を確保するのが大変でした。今年はそんなこともなく、空席もけっこうあったように思います。客層で言うと、ユニフォームを着ている人が極端に減ったような気がします。あとはいわゆる“カープ女子”と呼ばれる若い女性のグループをあまり見かけなくなりましたね」

 18年には最寄り駅であるJR九州日南線・油津駅の駅舎が赤く塗られ、セレモニーには大勢の人が集まった。球場の近くにある油津・岩崎商店街では、新設のカフェやカープの資料館が設置するなど、球団が町おこしにもひと役買っていた。しかし、今年は球場から商店街までの“カープVロード”を歩く人はまばらで、商店街を訪れる人も、前年に比べると明らかに減っていた。

 それでも第1クール最終日の2月5日には6500人の観衆が集まった。平日にもかかわらず、なぜ急に客が増えたのは疑問にも思えたが、そのカラクリをスポーツ紙担当記者が教えてくれた。

「この日はカープ以外の宮崎でキャンプを行っている球団が、全て休日だったからです。今年、宮崎では巨人、ソフトバンク、西武、オリックスが春季キャンプを行いましたが、だいたい4勤1休のサイクルで、この日に練習を行っているのはカープだけでした。だから関係者のエリアには他球団の人が多く来ていたし、解説者なんかもそうでしたね。スタンドはほぼ満員の状態でしたが、他のチームの帽子をかぶっているファンも、ちらほら見かけましたよ」

 昨年まで、二軍の宿舎として使用されていた「かんぽの宿」が閉鎖になった影響で、今年からキャンプのスタートが一軍は日南、二軍が沖縄と完全に分離してしまった影響もある、と前出の関係者は続ける。

「昨年まで二軍が使用していた東光寺球場(宮崎県日南市)は、天福球場から車で10分程度と、気軽に行き来ができる距離です。“カープ女子”のお目当ては、まだブレイクしていない若手選手だったりもするので、その影響もあるのかもしれません。また、故障や調整遅れなどで、スター選手が二軍で調整するケースも多く、その場合はサイン目当てのファンなどが、一軍のキャンプ地よりもさらにファンに近い二軍練習を狙うこともあったはずです」

 今季は菊池涼介と長野が二軍スタートとなり、その影響もあったのではという声も聞かれる。しかし、二軍のキャンプ地である沖縄市のコザしんきんスタジアムのスタンドは閑散としていた、と言わざるを得ない状態だった。ほんの1年前に“長野フィーバー”を巻き起こした本人と、メジャー移籍を断念したスター選手の参加も、集客にはつながらなかった。

 日南の一軍キャンプ最後の週末は、月曜日を挟んで最終日が祝日だったこともあり、まずまずの盛況を取り戻した。だが、一軍と二軍が入れ替わった2月13日の沖縄一軍キャンプ初日のセレモニーでは、長野、菊池涼も合流して役者が揃ったにも関わらず、歓迎セレモニーの際のスタンドはまばらな状況だった。

 昨年はリーグ4連覇を逃し、4位に終わったチーム状況や、新型コロナウイルスの影響などが原因として考えられるが、そればかりでもなさそうだ。

 初のクライマックスシリーズ進出で甲子園球場の半分が真っ赤になった頃から始まり、黒田博樹の日本球界復帰、そしてリーグ3連覇で頂点に達した人気に、そろそろ陰りが出てきているのかもしれない。地元マスコミ関係者は「昨年のことも影響しているかもしれない」と話す。

「昨年、カープは入場券販売のトラブルから始まり、シーズン中には緒方孝市前監督の選手に対しての暴行事件やバティスタのドーピング問題といった、悪いイメージの出来事が多すぎました。肝心の試合でも、終盤の逆転負けや大敗する試合が多く、満員のスタンドでも早い回で勝利を諦めて、ファンが試合途中で球場を後にする場面が多く見られました。これはリーグ3連覇中には、ほとんど見られなかった光景です」

 ブームの終息は、着実に近づきつつある。特に顕著なのが出版界で、一時は「KADOKAWA」などの大手出版社をはじめとした各社が軒並みムック本を制作し、選手やOBの自伝などが街の書店を賑わせていたが、最近はほとんど新刊が見られなくなった。

 さらに、芸能界でも、流行語大賞に選ばれた“カープ女子”に便乗するグラビアアイドルなども多くいたが、今ではそんな人も見かけない。芸能人と言えば、カープファンを自称し、試合途中に流れる応援歌「それいけカープ」のVTRに登場するチュートリアル・徳井義実が、昨年に所得隠し事件を起こして謹慎となり、今年も歌手の槇原敬之が薬物事件で逮捕されるなど、カープファンにとってはありがたくない事件が続いている。

 ただ、悪いことばかりではない、と長年カープを取材する地元在住のスポーツライターは言う。

「近年のブームで、マツダスタジアムの公式戦チケットの入手が難しくなり、昔のように会社帰りに野球でも、という雰囲気は完全になくなってしまいました。また、にわかファンが増えたことにより、一部のマナーの悪い輩が他球団のファンから反発を受けたりしています。ブームが落ち着くことによって、『またワシらのカープが戻って来る』と喜ぶ人も少なくないと思います」

 来月頭には、昨年大騒動になった公式戦チケットの販売が行われるが、今年はどんなことになるのか、まずは注目だ。

週刊新潮WEB取材班

2020年2月27日掲載

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