「原巨人」に早くも暗雲 「山口の15勝」を埋める“先発ローテ”が固まらない

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 セ・リーグ連覇、そして8年ぶりの日本一奪回を目指す原巨人。オープン戦の時期にも差し掛かって来た中で、坂本勇人、丸佳浩、岡本和真に続いて新外国人・パーラ、さらに“新星”モタが注目を集め、レギュラーを狙う若手陣もアピールを続ける野手陣がいる一方、依然として大きな不安を抱えているのが投手陣であり、特に先発ローテーションである。

 昨季の先発スタッフを振り返ると、山口俊が15勝(4敗、防御率2.91)を挙げ、菅野が11勝(6敗、防御率3.89)。以下、メルセデスが8勝(8敗、防御率3.52)、桜井俊貴が8勝(6敗、防御率4.32)、高橋優貴が5勝(7敗、防御率3.19)と続く。

 だが、オフにチームの勝ち頭であった山口がメジャーへ移籍。代わりにFA市場で美馬学の獲得に乗り出したが“振られる”形となり、結果的には新たな投手としてはルーキー以外ではサンチェス、ビエイラの外国人を獲得したのみ。ドラフトで即戦力投手を獲得できていれば違ったかも知れないが、1位抽選で奥川恭伸(星稜→ヤクルト)、宮川哲(東芝→西武)を連続で外した。外れ外れの1位で堀田賢慎(青森山田)を指名したが、あくまでも素材型の高卒ルーキーで、1軍戦力になるには数年がかかる。2位で指名した太田龍(JR東日本)は、身長190センチの大型右腕で楽しみな存在だが、春季キャンプでは二軍スタートだ。

 ビエイラの適性はリリーフであることから、「山口の15勝」の穴埋めは、昨季韓国で17勝を挙げたサンチェスと若手の成長に頼るしかない状況となっている。まずは、大きな鍵を握ることになるサンチェス。キャンプ2日目に初ブルペン。その後、2月13日と17日にはフリー打撃に登板して、力強いストレートに加えてカーブ、フォークの変化球を投じ、制球力の高さもアピールした。原監督以下、チームメイトからの評価も上々だった。

「ボールを受けた小林(誠司)だけでなく、原監督と並んで打撃ゲージ裏から投球を見つめた菅野も絶賛していた。練習態度に加えて報道陣との受け答えも真面目。ドミニカ共和国出身の選手は陽気なイメージがあるけど、性格は日本人に近く、日本の生活にもすぐに順応できるのではないでしょうか」(巨人を取材したスポーツライター)。

 ただ、懸念もある。「韓国での17勝」をどこまで信用できるかだ。サンチェスの昨季の成績(17勝5敗、防御率2.62)は非常に優れたものだったが、その前年は韓国で8勝8敗、防御率4.89。2017年はメジャーのパイレーツで8試合に登板して1勝0敗、防御率8.76という成績で、3A通算成績も49試合で8勝6敗1セーブ、防御率3.12と平凡なもの。実質、“昨年だけ良かった投手”である。

 過去にも韓国経由で日本に来日した外国人は多く、投手で有名なところでは、グライシンガーが06年に14勝12敗、防御率3.02の成績を残した翌年に来日し、ヤクルトで16勝8敗、防御率2.84と大活躍した。バンデンハークも2014年に韓国で13勝4敗、防御率3.18の成績を残し、翌年はソフトバンクで9勝0敗、防御率2.52と活躍している。こうした前例はあるとはいえ、サンチェスが開幕後、どのような数字を残せるかは、やはり未知数な部分が多い。

 そうなると、期待されるのが若手の成長で、前出の桜井、高橋に加えて、昨季プロ初勝利を挙げた高卒2年目の戸郷翔征、サイドスロー転向で変身の兆しを見せる元ドラ1・鍬原拓也、18年のイースタン投手三冠の高田萌生、昨季1軍8試合に登板した左腕・大江竜聖。さらに畠世周、今村信貴、古川侑利に加えて、先発再転向を志願している田口麗斗、大竹寛らの名前も先発ローテ入りを狙っている。

しかし、現時点ではどの投手も決め手を欠き、若手陣は経験不足。例えば、過去に「投手王国」と呼ばれたようなチームならば、最後の1枠を争うような実績の投手たちが、先発の4番手、5番手、6番手を争っているのが実情なのだ。さらに先発入りが確実だったメルセデスが、左肘に違和感を訴えて一軍キャンプからすでに離脱。18年に5勝、19年に8勝を挙げて、今季は2ケタ勝利が期待された育成出身の左腕にブレーキがかかり、原巨人の先発陣はさらに不透明になっている。

 そもそも新外国人を先発の2番手候補にしなければいけない状態が、日本一を狙うチームとしては相応しくない。そして、大黒柱である菅野も、昨季は不振に苦しみ、今季は新たなフォームで試行錯誤中である。仮に、菅野が今季も不安定なピッチングが続くようならば、それこそ“総崩れ”になる危険性もある。日本一奪回を掲げ、野手陣は充実している原巨人だが、先発ローテーションをしっかりと固められなければ、その道のりは険しいと言わざるを得ない。

週刊新潮WEB取材班

2020年2月24日掲載

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