【新型コロナ】日本人の想像を遙かに超える中国の医療格差 「不老長寿」というまやかし

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中国メディアは日本礼賛一色

 支払い能力があると証明できれば先に進めるのだが、それから患者は大行列を作って医師の診察を待つ。相当な時間がかかるのは常識らしく、行列には患者が雇ったアルバイトも混ざり、携帯電話で“依頼主”と連絡を取ったりしていたという。

「こんな行列に付き合ってはいられないと思い、その日は激痛に苦しみながらも帰宅しました。翌日はコネを使ったり、然るべき人物に贈り物を手渡したりすると、副院長の診察を受けることができました。中国人の富裕層は、私のような“裏ワザ”を使って優先的に診療してもらったり、富裕層専門の病院に足を運んだりするわけです」(同・報道関係者)

 しわ寄せが来るのは中間層だ。富裕層の割り込みで更に行列で待たされることになる。とはいえ、彼らは病院に行けるだけでまだ幸せなのかもしれない。

「中国では健康こそ金で買うものです。急病人が救急車を呼ぶと、金がないことを救急隊員が把握すると帰ってしまった、という話は有名です。中国が社会主義国家だった時代は完全に過去のものとなりました。今の中国は“国家資本主義”とでも呼ぶべき経済・政治システムで、アメリカより資本主義的だと言えるでしょう」(同・報道関係者)

 そんな中国は、上海にバイオ産業を集積させている。SankeiBizは19年4月5日、「上海浦東、バイオ医薬産業基地が発足」との記事を掲載した。

《上海市浦東新区はこのほど、「浦東バイオ医薬産業基地」を立ち上げた。張江イノベーション薬産業基地と張江医療機械産業基地を中心に発展させ、2020年には工業生産高とハイテクサービス業の売上高で計1000億元(約1兆6611億円)を目指す》

 中国共産党の念頭にあるのは、「不老長寿」だ。永遠の生という人類の夢に近づくことで、約13億9500万人の国民をまとめ上げようとしているのだ。

「中国の医療史を振り返ってみましょう。毛沢東(1893~1976)は1966年からの文化大革命で知識人を農村部に追放しますが、この中に医師も含まれていました。中国の医療水準は大きく後退することになります。そして1978年にトウ小平(1904~1997)が改革開放路線に転じ、中国の医学界は“先進国に追いつけ、追い越せ”の時代を迎えます」(同・報道関係者)

 この報道関係者によると、現在の中国医療界は先進国のキャッチアップを果たしただけでなく、世界のトップを走る領域も誕生しつつあるという。

「中国は国民の数が多いので、外科医は手術の経験数が増えます。練度は日本より高いと言われています。他に心臓や腎臓の移植も世界でトップクラスの技術を持っていると評価されています。これは研究や手術を実施する際、コンプライアンスの意識に乏しく、人体実験に近いこともやっているためだとされています」(同・報道関係者)

 かつての中国人は、テレビやクーラーを買ったり、自家用車が購入できる年収を手にいれたりすることで、「中国共産党は素晴らしい」と統治体制に満足を示してきた。

 だが中国の富裕層は、世界でもトップクラスの金持ちになった。今や“モノ”で満足することはない。

「マンション価格や株式市場の下落を、中国共産党は必死に買い支えています。貧困層が共産党に反旗を翻しても、幹部連中はそれほどの恐怖は感じないでしょう。しかし、もし中間層や富裕層が党に逆らう事態になれば、中国共産党は大打撃を受ける可能性があります。そのために党幹部は、不老不死という新しい夢を国民に提示したわけですが、今回のコロナウイルス騒動で中国の医療制度がどれだけ脆弱かを示してしまいまいました。これを中間層や富裕層がどう受け止めるのかは未知数で、これを今後、ウオッチする必要があると思います」(同・報道関係者)

 この報道関係者によると、今の中国では「日本ありがとう」というキャンペーンが大展開されているという。

「日本からマスクを筆頭に多くの支援物資が届いていることを大きく報じ、『北朝鮮や韓国、フィリピンは中国を非難するだけだが、日本は暖かい援助の手を差し伸べてくれる』、『安倍首相はリーダーシップを遺憾なく発揮している』と、ニュースは日本絶賛一色です。共産党の狙いは不明なところも多いですが、少なくとも日本に目を向けさせることで、中国共産党に対する批判を軽減させようとしている可能性はあるでしょう」

 中国の王朝が滅びる原因として、農民革命が多いのはよく知られている。しかし疫病も相当な影響を与えてきたようだ。

 明王朝は末期にペストや天然痘が大流行し、清王朝はペストの流行が弱体化を招いたという。果たして新型コロナウイルスは、習近平(66)の“治世”にどのような影響を与えるのだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2020年2月13日掲載

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