7年連続Bクラスの中日、チーム打率はリーグトップ、守備も堅実なのになぜ勝てないのか
与田剛を新監督に迎えて、監督経験も豊富な伊東勤をヘッドコーチに据えるなど首脳陣を一新して臨んだ昨季の中日だが、結果は前年と同じ5位に沈んだ。これで連続Bクラスは7年間に伸び、近年のセ・リーグではベイスターズの8年(2008年~2015年)に次ぐ不名誉な数字である。これまで一度も低迷らしい低迷を経験してこなかった中日としては、まさに我慢の時期が続いているが、果たしてこの苦難はさらに続くのか。現在の戦力から探ってみたい。まず最後に中日がAクラス入りを果たした2012年のラインアップは以下の通りである(登録名は当時)。
・基本スタメン
捕手:谷繁元信
一塁:ブランコ
二塁:荒木雅博
三塁:森野将彦
遊撃:井端弘和
左翼:和田一浩
中堅:大島洋平
右翼:平田良介
・先発
吉見一起
中田賢一
山内壮馬
岩田慎司
ソト
雄太
・リリーフ
山井大介
田島慎二
ソーサ
小林正
武藤祐太
岩瀬仁紀
この7年間で大きく顔ぶれが変わっていることがよく分かるだろう。野手では大島と平田以外の全員がユニフォームを脱いでおり、投手陣も吉見、山井、田島の三人は残っているものの、一軍の戦力としては厳しい状態になっている。そして、この7年間でドラフト指名した選手で現在主力となっているのは、野手では阿部寿樹、京田陽太、投手では又吉克樹、祖父江大輔、柳裕也くらいしか見当たらない。改めてではあるが、いかに世代交代が上手くいかなかった結果だといえる。
そんな中日だが、昨年の成績を見てみると、意外なことが見えてきた。チーム打率はリーグ1位、チーム防御率はリーグ3位、失点数はリーグ1位という数字が残っているのだ。また年間チーム失策数45はセ・リーグ最少タイ記録である。チーム全体でヒットが頻繁に出て、守備も堅実で失点を防いでいる、それなのに勝てなかったというのが昨シーズンなのである。
その原因の一つ目は得点力不足にある。チーム打率はリーグトップにも関わらず、得点数563は阪神に次ぐリーグ5位。チーム本塁打90本はリーグ最下位となっている。そして、もう一つ興味深いのが四球の数だ。チーム四球数349はダントツのリーグ最下位で、5位阪神の447と比べても約100も少ない数字なのである。セ・リーグの四球数が上位の顔ぶれを見てみると山田哲人(ヤクルト)、鈴木誠也(広島)、筒香嘉智(DeNA)、丸佳浩(巨人)といった各チームの主力が並んでいるが、中日は20位以内に大島(16位)とビシエド(20位)しか入っていない。
ちなみにヤクルトのチーム打率は中日よりも約2分低いが、四球数は200以上、本塁打も70本以上多く、トータルすると100点近い得点をマークしている。セイバーメトリクスでは出塁率と長打率を重視することが多いが、今の中日打線はまさにこの二つが圧倒的に足りていないということがよく分かる。
このオフの補強を見てみると、リリーフ候補としてサウスポーのゴンザレスを獲得している。しかし、昨年リーグ最多ホールドをマークしたロドリゲスが退団したことを考えると、プラスになっているとは言い難い。そんな中で期待できそうなのがドラフト3位で指名した岡野祐一郎と4位で指名した郡司裕也だ。岡野は昨年、公式戦8試合52回を投げて自責点5、防御率0.87とレベルの高い社会人で圧倒的な数字を残した。この投球が続けられれば、ローテーション入りも十分に考えられるだろう。郡司はチーム待望の正捕手候補。4年秋のリーグ戦で三冠王に輝いたバッティングに注目が集まるが、投手の良さを引き出すリード面も光る。開幕スタメンを勝ち取るようなことがあれば、チームが活性化することは間違いないだろう。
ただトータルで見ると、優勝争いを演じるにはやはり心許ないと言わざるを得ない。投手では梅津晃大、山本拓実、小笠原慎之介、清水達也などにブレイクの兆しが見られるのは救いだが、一方の野手は二軍まで見ても今年一気にレギュラーを奪いそうな選手は見当たらない。昨年から上積みが期待できるのは高橋周平くらいである。メンバーが変わらず、現有戦力に大きな上積みが期待できないということは、今年も昨年と同じような得点力不足に陥る可能性は高い。また、投手陣も先述したロドリゲスの穴は大きく、昨シーズン終盤に抑えを任せられた岡田俊哉も安定感を欠いており、リリーフ陣の整備も大きな課題と言えるだろう。
もし、今年も大きく成績を伸ばすことができなかったとなった場合は、現在のレギュラーに見切りをつけて大胆な血の入れ替えを行うのも一つの方法ではないだろうか。ドラフトで地元の大物高校生を獲得こそしているが、現在の延長線上には明るい未来が待っているとは言い難いのが現実である。


