王貞治氏「16球団構想」を実現させる方法、王さんが観客席を眺めながら口にした疑問は?

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“スーパーアジアリーグ”の魅力

「それよりも」と小林氏は続ける。

「私が考えるのは、東アジアに市場を拡げて4リーグを運営することです。具体的には、韓国から2球団、台湾から1球団、そしてレベルは低いでしょうが、将来の投資として中国の上海に1球団を新設し、日本の12球団と合流して16球団で“スーパーアジアリーグ”を結成する。実現すれば、プロ野球の裾野が一気に広がることになるでしょう。まずテストケースとして、ガチンコの交流戦に韓国や台湾のプロ球団との対戦カードを組んでみるべきだと考えています」

 名案だと膝を打つ向きも少なくないだろうが、重大な落とし穴がある。これでは「日本国内でプロ野球の観戦機会を増やす」という目標が達成できなくなってしまうのだ。

 だが、この問題は別のアプローチで解決が可能だと小林氏は指摘する。

「現在、日本には独立リーグが2リーグ存在し、16球団が運営されています。この16球団を、NPB球団のファーム組織とすればよいのです」

(註:日本独立リーグ野球機構に加盟しているチームが16球団、他に非加盟の4球団も存在する)

 実はアメリカのマイナーリーグは、この方法で運営されている。MLB各球団は、2軍(AAA)、から8軍(ルーキーリーグ)までファーム組織を持つが、そのほとんどが別の法人が経営する独立組織になっている。

 MLB球団とファーム球団は、選手育成契約を結び、MLB球団は監督・コーチ、選手を派遣、用具代なども負担する。ファーム球団は、こうした“支援”を受けながら興行を行うというわけだ。

「例えばニューヨーク・ヤンキースのAAA球団『スクラントン・ウィルクスバリ・レイルライダース』は、ペンシルバニア州スクラントン市に本拠地を置き、東海岸を中心にした14球団のリーグ『インターナショナルリーグ』に所属して、年間140試合のリーグ戦を戦います。ちなみに西海岸を中心としたAAAのリーグは『パシフィック・コーストリーグ』と呼ばれ、16球団が所属しています」(同・小林氏)

 これを日本で当てはめるとどうなるか。例えば現在、ルートインBCリーグに所属している茨城アストロプラネッツが、千葉ロッテマリーンズと選手育成契約を結んだとしよう。小林氏は「茨城アストロプラネッツの興行価値が飛躍的に上昇することは間違いありません」と言う。

「ドラフト1位で163キロを投げる佐々木朗希投手(18)が2軍スタートとなれば、彼は茨城アストロプラネッツの所属選手として2軍の試合に先発することになります。一方、ロッテの1軍で最年長の選手は西武とソフトバンクで活躍した細川亨捕手(40)です。彼が調整のため2軍に来たとしましょう。場合によっては佐々木と細川のバッテリーが先発するかもしれません。実はアメリカの3Aが独立採算制でも、それなりの興行成績をあげているのは、期待のルーキーと知名度が抜群のベテランが出場するという魅力があり、熱心な野球ファンがわざわざ見に行くからなのです」

まだまだ野球人気の維持は可能

 だが、これは小林氏の腹案というより、独立リーグサイドがNPBに要望を出している内容なのだ。

 新しい運営方式によるマイナーリーグがスタートすれば、全国各地の地方都市で、“身の丈”に見合った、地域に密着したチーム運営が可能だ。全国各地でプロ野球の観戦機会が増加すれば、競技人口もファン層も裾野が広がるのは言うまでもない。

 小林氏は「サッカーは“見てもプレイしても楽しいスポーツ”なのに対し、野球はそう簡単にはいかないところがある」と指摘する。

「サッカーは真冬でもボール1個で楽しむことが可能で、実際にプレイすれば体温が上昇してぽかぽかになります。短時間でいい運動になりますよね。もちろんJリーグを観戦しても楽しめます。ところが真冬の野球は打順を待つ間に凍えてしまいます」

 見るスポーツとしての野球は、団体戦と個人戦が絶妙に絡み合い、一発逆転ありでスリルも満点。観戦して楽しいスポーツであることは間違いない。

「一方、実際にプレーする場合ですと、用具に費用がかかったり、ルールが複雑だったりして、楽しむにはかなりハードルの高いスポーツなのです。だからこそ、プロ野球の質を落とさずに観戦機会を増やすためには、アジア圏のプロチームと国内独立リーグとの連携が不可欠なのです。逆を言えば、今あるリソースをフル活用すれば、まだまだ野球の人気を維持することは充分に可能だと思います」

週刊新潮WEB取材班

週刊新潮 2020年2月4日掲載

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