王貞治氏「16球団構想」を実現させる方法、王さんが観客席を眺めながら口にした疑問は?

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野球の競技人口は増加中!?

 NEWSポストセブンは1月20日、「王貞治氏 『16球団』発言の真意はラグビー人気への警戒心か」の記事を掲載し、文中で「ソフトバンク番記者」が「周囲も真意を測りかねています」と首を傾げるコメントを報じた。

 だが小林氏は、王会長の発言をニュースで把握すると、取締役として勤務していた時期によく耳にした“口癖”を思い出したという。

「福岡ドーム(註:2月29日から「福岡PayPayドーム」に改称)でのホークスのホームゲームは、ありがたいことに、いつも満員です。その時に王会長は観客席を見つめながら、『あの中で硬式野球をプレーした経験のある人は、どれくらいだろう?』と疑問を口にされるのを、よく耳にしました。スポーツの競技人口の増加には、幼少期のプレー経験、観戦経験が大きな影響を与えることは、科学的にも立証されています。観戦してくれているのはありがたいが、野球をプレーした経験のある子供が減れば、野球の競技人口が減少してしまう。王会長は、いつも野球の普及のことを気にしていました。16球団構想はそんな思いから口にされたと考えて間違いないでしょう」

 意外に思う方も少なくないだろうが、硬式野球の競技人口を調査すると、“割合”は増えているのだ。80年代、男子高校生の20人に1人が硬式野球部に所属していたが、現在、その割合は10人に1人と増加している。

「しかし、野球人口が増えていると実感している人は、ほとんどいません。むしろ減少が進行中です。この謎を解く鍵が、男子高校生の下、小中学生の野球人口です。とりわけ中学の軟式野球部員の減少は顕著で、今世紀に入って20年で半分になってしまいました。このように裾野が劇的に狭まる中で、高校野球だけが、甲子園という強力なコンテンツのおかげで“一度はやってみたい”という思いで入部してくれていたのと、加えて女性部員の増加で、その数を保っていましたが、この5年は減少に転じています。野球人口を更に増やす、つまり需要を喚起するためには、四国や東北の日本海側など、『プロ野球観戦の機会が少なかった地域』にもチームを創設し、幼少期の観戦経験を増やすのは効果的でしょう」

 小林氏は王監督の考えには「全く同感です」としながらも、実現にはハードルが高いとも考えている。

 それは興行の問題だ。東京一極集中の日本において、プロ野球のフランチャイズが成立する都市がどれだけ残されているか、という疑問だ。

 日本野球の頂点にふさわしい興行を行うには、少なくとも100億円程度の費用はかかる。16球団となれば、当たり前だが4球団を新設しなければならない。果たして、それだけの費用をねん出できるような市場規模を持つ地方都市が4つも存在するだろうか?

 小林氏のシミュレーションによれば、静岡県と新潟県(北信越)にその可能性はあるが、これでも2球団しかない。

 さらに増やすとなると、四国や南九州、沖縄、東北の日本海側ということになるが、こうした地域の都市で100億円の市場規模を求めるのは厳しい。

 残り2球団を実現するには、これまで存在していなかった収益分配制度などを導入する必要があるが、この制度案を既存オーナーの3分の2が賛成する見通しは厳しいと思われる。

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