シャノアール、ベローチェが珈琲館と同資本傘下に…喫茶店業界地図に変化の兆し

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 出勤前や営業の合間にひと息つきたい。そんな人たちに愛される喫茶店の業界地図に変化の兆しが表れている。

「まさか、シャノアールが買収されるとは思いませんでした」

 こう驚きを隠さないのは、外食産業と取引のある大手飲料メーカーの役員だ。1965年設立のシャノアール社はコーヒーだけでなく、パスタなどを提供し、ゆっくり座れるフルサービス型の喫茶チェーン。傘下にセルフサービス型のカフェ・ベローチェなどがあり、全国で192店舗を展開している。先の役員が続ける。

「1月7日に買収を発表したのは、独立系投資ファンドのロングリーチグループ。過去にウェンディーズ・ジャパンやファーストキッチン、2年前にUCCから珈琲館を買収して話題になりました」

 総務省統計局によれば、全国の喫茶店数は81年の15万4630店をピークに下降の一途を辿り、2016年には6万7198店と半減した。

 喫茶店業界に詳しいアナリストの分析では、

「閉店に追い込まれたのは、ほとんどが老夫婦で営んでいたような街の喫茶店。廃業のワケは、セルフサービス型カフェの台頭が大きいでしょう。1杯300~500円が相場だったコーヒーを、セルフサービス型が200円前後で提供したため、街の喫茶店から客足が遠のいたのです」

 確かに、セルフ型の代表格のドトールとスターバックスは拡大を続けて、現在の店舗数は共に千超と、主要駅周辺には必ずといっていいほど店がある。が、珈琲館とシャノアールはフルサービス型。ロングリーチに勝算はあるのか。

 外食産業を取材する経済ジャーナリストの福田健氏の解説では、

「7年前、別のファンドに買収されたフルサービス型のコメダは、デニッシュパンの上にソフトクリームを乗せたシロノワールを武器にフルサービス型を継続しました。結果、店舗数は買収後の5年間で500から800に増加しています」

 コメダは、昨年6月に全都道府県に出店を果たした。

「ロングリーチが珈琲館とシャノアール、そしてベローチェで共通のキャンペーンを行えば集客につながる。また、立地環境に応じて珈琲館をベローチェへ“衣替え”する手法も採れる。ロングリーチは、勝算ありと考えているはずです」(同)

 とはいえ、古き良き喫茶店がこれ以上なくなるのも寂しいような。

週刊新潮 2020年1月23日号掲載

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