第二の村上宗隆は現れるか 2020年ブレイクしそうなプロ野球“若手トップ10”

スポーツ 野球

  • ブックマーク

Advertisement

 毎年新たなスター選手が登場するプロ野球界。昨年は、投手では山本由伸(オリックス)、高橋礼(ソフトバンク)、柳裕也(中日)、野手では村上宗隆(ヤクルト)、西川龍馬(広島)、阿部寿樹(中日)などが大きく成績を伸ばし、一躍チームの中心選手となった。山本や西川は前年から躍進の兆しはあったものの、それ以外の選手がここまで活躍すると昨年の時期に予想していたファンは少なかっただろう。そこで今回は、まだ全国的な知名度は低いものの、今年ブレイクが期待できる若手選手を投手、野手5名ずつ、計10人をピックアップしてみた。

 まず投手だが、毎年のように新星が登場するソフトバンクに今年も期待の選手が多い。なかでも、筆頭候補に挙げたいのが杉山一樹だ。ルーキーイヤーの昨年はキャンプ中に守備で右足首を故障して出遅れたことが響いて一軍登板はわずか2試合に終わったが、デビュー戦ではいきなり最速155キロをマークして観客を沸かせた。193cmの長身から投げ下ろすボールの勢いは一軍に入っても上位であり、鋭く変化するスライダーのキレも申し分ない。制球力に少し不安は残るが、万全の状態でキャンプを乗り切れば中継ぎの一角に入ってくる可能性は十分にあるだろう。

 もう一人楽しみなのがプロ入り4年目のサウスポー、古谷優人だ。高校時代から150キロを超えるスピードに定評があったが、昨年は三軍戦で160キロもマークするなど、ストレートにはさらに磨きがかかっている。オフに行われたアジアウインターリーグでも投球回数を上回る奪三振をマークするなど見事なピッチングを見せた。今季は鮮烈な一軍デビューに期待したい。

 移籍がきっかけとなって飛躍する選手もいるが、そのケースに当てはまりそうなのがFAでの人的補償で移籍した小野郁(ロッテ)だ。これまでの5年間で一軍通算39試合に登板して0勝1敗、防御率7.30という数字にとどまっているが、年々スピードは着実にアップしてきている。二軍では一昨年20セーブ、昨年14セーブと結果を残しており、何かきっかけがあれば一気にブレイクする可能性は高い。リリーフ陣の勤続疲労が目立つロッテでは貴重な存在となりそうだ。

 日本シリーズで4連敗と苦杯を舐めた巨人にも、リリーフタイプで面白い投手がいる。古谷と同じ高校卒4年目の右腕、堀岡隼人だ。育成ドラフト7位という低い評価でのプロ入りだったが、昨年7月に支配下登録されると8月には一軍デビューも果たしている。二軍での成績は29試合に登板して9セーブ、防御率1.04という見事なもので、奪三振率10.13というのも頼もしい。リリーフ陣は流動的な部分が多いだけに、キャンプでアピールして開幕一軍入りを狙いたい。

 ここまでの4人はリリーフタイプだが、先発として大きな期待がかかるのが梅津晃大(中日)だ。昨年は右肩痛で出遅れたものの、8月に一軍デビューを果たすと先発でいきなり3連勝。最終的にも4勝1敗、防御率2.34という見事な数字を残した。角度のあるストレートとフォークは一軍レベルでも十分通用しており、大型ながら制球力があるのも大きな長所だ。大学時代から故障が多いのが玉に瑕なだけに、コンディショニングにはくれぐれも注意してもらいたい。一年間フルに投げることができれば、二桁勝利も期待できるだろう。

 野手では、長く主砲として活躍したバレンティンの抜けたヤクルトの外野手二人をまず取り上げたい。3年目の塩見泰隆と2年目の中山翔太だ。塩見は過去2年間、二軍では打率3割をキープする圧倒的な数字を残しており、持ち味のスピードに加えて長打力もアップしている。年齢的にも今年で27歳と若くないだけに、レギュラー獲得には最後のチャンスくらいの意気込みを見せてもらいたい。中山は昨年夏場以降チャンスをつかみ、28安打、5本塁打と1年目にしては上々のスタートを切った。パワーを生かした思い切りの良さが持ち味で、大型の割に動きも悪くない。昨年の勢いそのままに、一気に定位置獲得を狙いたい。

 秋山翔吾(レッズ)が抜けた西武の外野陣もチャンスが多そうだが、面白いのが川越誠司だ。投手として2015年のドラフト2位でプロ入りしたが、故障もあって昨年から野手に転向。二軍のレギュラーシーズンでは打率2割台前半に終わったものの、オフに行われたアジアウインターリーグでは打率.367、3本塁打、21打点と見事な成績を残して最優秀野手に選ばれた。金子侑司を除くと流動的な状況だけに、レギュラー獲得の可能性も十分にあるだろう。

 筒香嘉智(レイズ)がメジャーへ移籍したDeNAでその穴を埋める存在の一人として期待したいのが伊藤裕季也だ。3月のオープン戦では怠慢な走塁で途中交代となり、ほろ苦いプロのスタートとなったが、イースタンではリーグ4位となる14本塁打をマーク。一軍初スタメンとなった8月10日の中日戦では二打席連続ホームランを放つ見事な活躍を見せている。たくましい体格から広角に長打を放つバッティングが持ち味で、器用さも持ち合わせている。長打力をアピールして開幕スタメンを狙いたい。

 スラッガータイプではやはり安田尚憲(ロッテ)を取り上げないわけにはいかないだろう。二軍では過去2年間十分な結果を残し、昨年はイースタンのホームラン王にも輝いている。ただ安田の場合、本人の問題以上にチーム事情が大きく立ちはだかる可能性が高い。サードには昨年32本塁打のレアード、ファーストには24本塁打の井上晴哉がいるほか、外野もソフトバンクからFAで福田秀平を獲得したことで層が厚くなっている。そんな中で出場機会を増やすにはキャンプでの猛アピールが必要となるだろう。同学年で、昨年セ・リーグ新人王に輝いたヤクルト・村上宗隆の活躍に刺激を受けて、3年目の大ブレイクに期待したいところだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年1月22日掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。