ゴーンは私を3度訪ねてきた――ビットコイン事件で無罪、カルプレスが初証言

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 マルク・カルプレス(34)は一時世界最大のビットコイン取引所を運営していたフランス人だ。その人生は2014年2月、ビットコイン消失事件に見舞われたところから暗転する。

 額は約480億円。やがてカルプレス自身の不正操作が疑われ、警視庁捜査2課が私電磁的記録不正作出・同供用容疑で彼を逮捕した。更に預かり資金を使用したとして業務上横領や特別背任でも逮捕・起訴。18年12月の公判で懲役10年を求刑されたが、19年3月に執行猶予付き判決が下る。ビットコインはハッカーに盗まれた可能性が高いと判断された実質勝訴だった。

「きちんと判決を受けるために私は真っ向から戦い、横領、特別背任について無罪判決を獲得したのです。検察は控訴しませんでした。起訴されたら有罪から逃げられないというのは誤った見方。私のケースを見て頂ければ、お分かりでしょう」

 と、カルプレスご本人。彼の初証言を続けると、

「(ゴーンとの)出会いは19年5月で計3回会った。自分の事件のことを話したが細かいところまでは入らなかった。(日本の司法制度についての不満は)会見でお話しされていたことと同様でした」

 要するに、〈日本の有罪率は99・4%で、外国人の場合はさらに高くなる〉といった主張だ。保釈後すぐに実質無罪を勝ち得た人物に会うとは、相当関心が高かったのだろう。

「保釈を受けていたのに逃亡したことに私は賛成できません。保釈されている以上、裁判で戦う上での大きな制約は取り除かれています。ゴーン氏は逃亡しないと誓約し、裁判所はそれを信頼して保釈を認めたのですから、これを裏切るべきではない。ゴーン氏の行為は、今後、外国人の被告の保釈が認められなくなるきっかけとなりかねない。制度に不満を抱いたとしても、その国の尊厳を損なうやり方で戦うべきではありません。日本には不備はたくさんあります。しかし、健全な法治国家でもあります。正しく戦えば正しい結果を得ることができる」

 無罪率が0・6%以下であろうと戦ったから言えるセリフである。自身がやったことは自分が一番熟知している。ゴーンにはその自信はなかった。

週刊新潮 2020年1月23日号掲載

特集「『ゴーンvs.日本』九つの大罪」より

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