芸歴50年「桂文珍」が笑いに変える「吉本騒動」

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 上方落語の大看板・桂文珍(71)は2020年2月から、東京・国立劇場で独演会を敢行する(https://bunchin2020.jp)。多彩なゲストを招き、のべ3万2千人に笑いを届ける大看板は吉本興業に所属して半世紀。19年に世間の耳目を大いに集めた騒動にも言及し、笑いに変えるのだった。

 芸歴50年を迎えた上方落語の大看板は、

「どうも、ビートたけしでございますぅ」

 と笑いながら現れた。

“魔性の女”とかかわりあって以降の“殿”のご乱心ぶりを本誌(「週刊新潮」)が追いかけてきたことにひっかけたものだ。

 それはさておき、近く予定される20日間でのべ3万2千人、空前にして絶後と思われる独演会について、

「10年前に10日間の独演会をやって、もう二度とやりたくないと思っていたんですが、5年ほど経ったらやっぱりまたやりたいなぁと、それに同じ10日やとおもろないしなぁと。来年(2020年)はオリンピックの年。パラリンピックも含めて、お喋りのアスリートとして何か発表できる機会があればと思っていたところ、国立劇場のそれも大劇場が20日間貸してくださるということで。『2020』に『20』。40本の話を一気呵成に、豪華なゲストと共にという独演会です」

 20年の2月28日から始まって6日間の中休みを挟み3月24日までで1日2演目、合計40演目。笑福亭鶴瓶、立川志の輔、桂文枝、春風亭小朝、三遊亭円楽ら、日本を代表し、“金髪豚野郎”とか“8年愛人”などと騒がれ、そんなこんなを芸の肥やしとした落語家・講談師20人が華を添える。

「自分にないものをお持ちの方に出て頂いております。(立川)談春さんなんかは“わざわざお願いしに来ないでください、私の方から行きますから”と言っておりました。(林家)木久扇師匠なんか大先輩ですし、ウチの兄弟子(文枝)にも快く出てもらいますし、光の当たっていなかった講談の世界を光らせている神田松之丞さんとか、私は全員聞けますから楽しみですわ。落語協会とか芸術協会とか立川流とか三遊派とか講談界とか、ぼーっとしているように見えてバランスを取って選んでおります」

 自身の噺の見どころ、聞きどころを尋ねると、

「どれもこれもなんですが、(5日目の)『帯久(おびきゅう)』、(15日目の)『不思議の五圓』なんかがそうでしょうか。後味のいいような結末になっていたり、ちょっと今風に演出してあったりしますんで、気持ちよく笑って心地よい時間を過ごしてもらえると思います。また、落語は得てして女性の“ガラスの天井”を扱うような話が多いんですね。例えば女性の気持ちを無視して嫁に行かせるとか、女性をモノのように扱う男のワガママな部分とか。今の時代、そういうことに耐えられないというメッセージも各方面からありますから、それを汲み取りましてね。そうでなければ、お客様に来て頂けない(笑)」

 明暗分かれる2軒の呉服屋に大岡裁きが下る「帯久」。三代目桂米朝が発掘した「持参金」に、“ガラスの天井”を取っ払う要素を加えた「不思議の五圓」。では、“ちょっと今風”とは?

「(千秋楽の)『スマホでイタコ』は6Gの時代設定で、アプリがいっぱいありまして、『反社を見つけるアプリ』に『申告漏れをしないアプリ』と、弊社のコンプライアンスに沿うような内容のもの、今の時代に合うものが取り揃えられておりまして……」

 19年、上を下への騒ぎとなった吉本興業の闇営業問題や所属芸人・チュートリアル徳井義実の申告漏れがすでにネタとして盛り込まれている。

 また、“あの世”にいる六代目笑福亭松鶴、三代目桂米朝、三代目桂春団治、五代目桂文枝の4人が、19年7月に亡くなったジャニー喜多川氏のもとで「亡者(もうじゃ)ニーズ」を結成させられるという。

 イラストレーターの山藤章二氏は文珍の落語を「バリアフリー」と評した。初心者と落語フリーク、古典と新作などの格差を文珍は軽く越えていくというわけで、この独演会もその面目躍如だろう。

「落語の入り口って敷居高くないですよ、面白いですよとやることで、世代を超え、男女問わず楽しんでいただけるようなアレンジをしたい。45年間ほど契約をして頂いていますから、吉本さんと。契約の話になったら『さん』が付きましたが(笑)。書面を交わして署名してハンコ押して」

 契約といえば、会社側と契約書を取り交わしていない所属タレントもいることが騒がれた年でもあった。

「タレントが6千人もおって、(全員と)そんなんしてたら会社潰れますやん」

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