芸歴50年「桂文珍」が笑いに変える「吉本騒動」

エンタメ

  • ブックマーク

Advertisement

“ほんの5時間半ほど”

 吉本を巡る動向そのものが落語のような展開になり、それこそボールを前に落とす反則が続出したように映る19年。

 反社の会合に出席し、金銭を受け取っていた件で会見を開いて謝罪した宮迫博之(雨上がり決死隊)と田村亮(ロンドンブーツ1号2号)。彼らに「会見したら、お前ら全員クビ」と圧力をかけていたとされる件で、頭を下げ続けた岡本昭彦社長の「5時間半会見」。これらをどんな風に見ていたのか?

「もうちょっと時期がズレて、大みそかの紅白の裏にぶつけるってことができたらおもろかったんですがね。宮迫と田村の会見を18時台にぶつけて、岡本社長で年を越すっていうね(笑)。社長の会見がYouTubeにアップしてありまして、あんな長い間YouTube見たん初めてでしたけど、よく頑張らはりましたよね。社長がアメフトで鍛えた体力ですわ。見方はいろいろあるでしょうけど、感心しました。なんばグランド花月では、“そんな長い時間話しません、ほんの5時間半ほど”なんて言うと、皆さん笑われてますね」

 そして、

「むかし芸人は人扱いされてませんでしたから」

 と続ける。

「何でもよかったんですが、今はそうはいかない。リアルはちゃっかりして、うっかりはフィクションの中で、ということになります。社会からはみ出してるくらいの奴がホントは面白いんですがね。聞かず嫌いの方もいらっしゃいますけど、落語ほど身体に優しい芸能はないです。目瞑って聞いて頂いても世界が描けるし、寝てもらってもいいですし。SNSでのやりとりもあって生きづらい、苦しい時代なんですけど、それを笑い飛ばしましょうというのがフィクションの魅力です。そうやって笑いながら死ねたらいいですけどね。三途の川渡るときにキャッシュレスやとどうなのかとか。“こいつ偉そうにしてますけど、お金持ってませんよ”“ビットコインやったら払えるのか、リブラやったら?”みたいなことで(11日目の)『地獄八景亡者戯(ばっけいもうじゃのたわむれ)』をやってみたりとかね」

 サバに当たって死んだ主人公の地獄の珍道中を辿る三代目米朝の代名詞「地獄八景~」が“ちょっと今風”に楽しめる。口にした言葉は常に噺と繋がっていき、ネタと向き合ってきた50年を思わせる。

「働き方改革って言いますけど、働き甲斐があるってことが大事ちゃうかなと、思てまんねやわ」

“落語に青春”は続いている。

週刊新潮 2020年1月2・9日号掲載

特集「国立劇場で20日間独演会 芸歴50年『桂文珍』が笑いに変える『吉本騒動』」より

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。