「無臭」を貫いた乃木坂46・白石麻衣の光と影

芸能 2020年1月14日掲載

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 乃木坂46の中で最初に覚えたメンバーは、生駒里奈だった。かわいくて、センターで一生懸命に頑張っている感じが目に止まったから。でも好きだったのは白石麻衣である。まぶしいほどの美しさがあるのに、目の奥で暗く広がるあきらめを感じるのだ。まともにアイドルをやっても、思ったほど報われないこともあるということをよく呑み込んだ顔をしていた。真面目にやっても報われないなら、好き勝手遊んでやれというタイプも多かっただけに、白石が持つ光と影、ブレない美貌とたたずまいは、アイドルとして唯一無二の引力を持っていたと感じている。

 そんな白石がついにグループを卒業するという。後輩も育ったし、自分もいつまでも乃木坂の名前に甘えていられないからと、ストイックな決意表明が行われた。

 整ったルックスに、バラエティでも尻込みしない度胸。人形のような可愛らしい顔でありながら、素顔の白石は実は男よりも男っぽい性格なのではないだろうか。清潔感あふれるグループのイメージを崩すことなく、8年間ノースキャンダルを貫いたというプロ根性も立派である。生駒や橋本奈々未、西野七瀬ら黄金期を支えたメンバーの卒業には涙を見せたり、後輩たちのスキャンダルと脱退には思うところもあっただろう。グループは違えど、NGTでの暴行未遂事件や、欅坂の平手のメンタル不安視など、周囲が騒がしく落ち着かないことも多かったはずだ。それでもその楚々とした表情は崩れることがなかった。

 女が集まれば1人や2人は仲の悪い相手がいるものとされる。それでも白石は男の影はもちろん、メンバーとの不仲さえ匂わせることなく、「無臭」のアイドルであり続けた。その徹底したひたむきさは業界関係者からも高い評価を得ていたと見える。かつて某誌の行った、業界関係者が選ぶ「好きな乃木坂」では、生駒ちゃんを抑えて1位になっていた。ただ彼女に対する特別扱いや、すでに完成されたキャラには不満も多く、「嫌いな乃木坂」でも1位になっていたのは興味深い。でもきっと白石なら、その結果すら冷静な顔をして受け止めただろう。

 ちなみに卒業に際しては、かねてから仲が良く、同い年の1期生・松村沙友里だけに相談したという。が、その松村は過去、既婚の出版社社員とのキス写真をすっぱ抜かれている。清純さが売りのグループとしては衝撃的な事件であり、他メンバーの不祥事もあってその年の紅白は落選した。過ぎたことだが、白石にとってみれば「やっぱり私がグループを支えるしかない」と改めて思わざるを得ない出来事だったのではないだろうか。

優等生グループだからこそのジレンマ? 孤高のアイドル・白石の行く先は

 そうは言っても、全体的には優等生グループだった乃木坂。むしろ「清く・正しく・美しく」というメンバーぞろいだからこそ、ひと味違う個性を出すのはリスクでもあっただろう。そして白石にとっての不幸は、その中でも際立つ美貌と勘の良さがあるのに、周囲との調和を考え続けてしまう思考回路ではなかったか。けれども一方で、その思考こそが、アイドルとしての白石麻衣を成長させた持ち味だったとも感じる。

 ファンと言えるほどの熱意はないので見当違いかもしれないが、なんとなく白石と通じるものを感じたのは生駒ちゃんと、橋本奈々未だった。どちらも自分よりもグループの完成度を重んじるように、息を詰めて歌ったり踊ったりしていた印象がある。でも彼女たちは先に卒業した。もしかすると白石は、自分と同じ目線と意識を持った現役メンバーが現れるのを待ち続けていたのではないだろうか。
 
 大ヒットとなった白石の写真集「パスポート」は、いろいろな仕事をしたいという白石に対し、プロデューサーである秋元氏が「彼女ならもう、どこへでも行ける」という意味を込めて提案したタイトルだという。白石が渡そうと持ち続けていた切符のような想いやプロ意識は、後輩たちにようやく手渡せる時期を迎えたのだろう。孤高のアイドル道をやり抜いた白石の前には、どこへでも繋がる無数の道が広がっている。これからも強烈な光と影をまとって、芸能界を飛び回ってほしい。

(冨士海ネコ)