訪日「中国人旅行者」は年838万人 日本に金が落ちないシステムを作る在日中国人の闇

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爆買いで人間関係を築く

 日本の旅行会社に代わって、中国人団体客を受け入れたのは、在日中国人だった。日本国内には約70万人いると言われているが、

「在日中国人は、免税店の売上に応じたコミッション(手数料)でツアー代金の不足分を補ったのです。そんなビジネスが成り立つ背景には、中国の人たちが旅行先で土産物を大量に購入する習慣があるからです。人間関係を重視する中国社会では、土産物を人に贈ることで、人間関係を築く。モノを介して、人と人が良好な関係をつくるわけですが、日本人にはちょっと理解しにくいかもしれません」

 中国人のあの爆買いは、人間関係を築くためだったとは。

「在日中国人のこのビジネスは、特定の免税店でしか買い物ができないので、多くの観光客が訪れても地元には金が落ちません。そのため、“ゼロドルツーリズム”(ツアー代金が格安)と呼ばれています」

 このゼロドルツーリズムは日本だけでなく、中国客が多く訪れる韓国や台湾、香港、タイなどでも行われていて、その問題性が指摘されているという。

 訪日中国人旅行客数が初めて100万人を突破したのは2008年。その翌年には、中国人の個人旅行者のビザが発券できるようになったため、個人客が押し寄せるようになったという。

「さらに15年1月の入国管理法の改正で、外航クルーズ船の外国人観光客の入国審査が簡素化されたため、中国人旅行客がクルーズ船で大挙日本に押し寄せ、“爆買い”が話題になりました。それを問題視した中国政府は16年、中国人が日本で購入する土産物に関税をかけるようになったのです。これで爆買いは一気に減少しました」

 中国人の爆買いが終息したため、ゼロドルツーリズムは下火となったが、次に在日中国人がターゲットにしたのは中国の個人客だという。

「中国人旅行客は、日本の食事や商品は安いが、交通費と宿泊費は高いと感じています。お金は買い物に使いたいので、ホテルはどんな部屋でもいいから安いところを見つけたい。それで、在日中国人が中国人旅行客のために民泊を始めました。数年前、勤務していた会社を辞め、池袋のマンションを数室借りて、民泊を始めた知り合いの在日中国人がいます。彼は、最低2泊を条件に、1日800元(約1万3000円)で提供していました」

 もっとも、2018年から民泊新法が施行され、民泊のホストは自治体に届け出し、年間180日の営業日数の制限が設けられた。ところが、

「民泊業者の話によると、在日中国人が無登録の“違法民泊”を続けているそうです。彼らはネット上で中国人旅行客とやり取りしているのですが、どのくらいの数なのか、把握できないそうです」

 さらに、違法民泊以上に美味しいビジネスは、“白タク”だという。

「在日中国人が、営業許可を持たない自家用車で中国の個人客の送迎サービスを行ったり、都内から箱根や富士山に小旅行に行ったりする白タクが急増しています。この中国系白タクは、中国の配車アプリサービス『皇包車(こうほうしゃ)』に登録していて、中国人客から依頼があると、日本に来る前にモバイル決済で清算を済ませています。この報酬は所得として申告していません。沖縄には、中国系白タクが100人以上いると言われ、沖縄のタクシードライバーの仕事が奪われているそうです。配車アプリサービスに登録している中国系白タクは、日本国内に数千人はいるだろうと言われています」

 白タクのような闇営業が日本で暗躍している背景には、先進国では珍しくないライドシェア(自動車の相乗り)が日本でいまだに実現できていないことがあるという。中国人旅行客が増えても日本にお金が落ちないようじゃ意味がないような……。

週刊新潮WEB取材班

2020年1月11日掲載

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