ドン・キホーテに異変 「ユニー」子会社化で“目利きのできる社員”が消える悪影響

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 1989年3月、東京・府中市で「ドン・キホーテ」1号店を開業して以来、30期連続で増収増益を続けている「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」(PPIH、旧ドンキホーテHD)。ところが2019年11月、20年6月期の通期の業績予想を、初めて経常利益と当期純利益が前期比マイナスになると発表した。これを受け、流通専門誌『激流』(12月号)は「ドン・キホーテ」の特集を組んだ。その中で記事を執筆したジャーナリストの石橋忠子氏は、優秀な人材が不足し、“現場力”が喪失していると指摘している。

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 2013年からPPIHの社長を務めていた大原孝治氏が退職したのは9月25日のこと。大原氏は社長就任以来19年6月期までの6年間でPPIHの売上を2倍強、営業利益を2倍弱に拡大した。順当に行けば会長か副会長になってもおかしくない人物である。当初、社長を退任した彼は、米国事業を統括するグループ会社の社長に就任するはずだった。それが、退職したとあって、大きな波紋を呼んだのだった。

「大原氏がPPIHを辞めた理由は明らかにされていません。一身上の都合とか健康上の理由ではありえない。彼は健康で元気いっぱいでしたから」

 と解説するのは、石橋忠子氏。

「PPIHの取引先から聞いた話では、ドンキの創業者の安田隆夫会長から大原氏が切られたのではないかと言われているそうです。理由は、大原氏が推し進めたタイ店が苦戦しているからです。安田会長は、タイ店への進出はもともと乗り気ではなかったのです。また、完全子会社化したユニーの店舗をドン・キホーテへ業態転換するにあたって、大原氏は当初5年で100店の転換と言っていた。ところが途中で、3年で100店と言い出したため、吉田直樹氏(新社長)から急ぎ過ぎだと注意されていました。安田会長も吉田氏の意見に賛同したそうですから、もう大原氏には任せられないと思ったのではないか」

 PPIHは2017年11月、ユニーの株式を40%取得し業務提携を結び、今年1月に残りの株式も取得して完全子会社化した。

「PPIHがユニーの株式を40%取得した時点で、ユニーの社員はかなり辞めていましたが、完全子会社となった今年、さらに退職者が増加しています。特に7月以降は、週に20人を超えるペースで辞めており、今年だけで退職者は600人を超えると見られています」(同)

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