スター選手が大量流出、争奪戦になる二選手、 「メジャー式FA」導入なら日本球界はこうなる!

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山田の争奪戦は確実

 まず一軍登録6年でFAとした場合、新たに対象となる選手を挙げてみると以下のような顔ぶれとなった。

●セ・リーグ
【巨人】鍵谷陽平、小林誠司【DeNA】中井大介、梶谷隆幸、筒香嘉智【阪神】岩田稔【広島】今村猛、中崎翔太、田中広輔、安部友裕、堂林翔太【中日】大野雄大、福田永将【ヤクルト】小川泰弘、山田哲人、荒木貴裕

●パ・リーグ
【西武】増田達至、武隈祥太、金子侑司、木村文紀、熊代聖人【ソフトバンク】武田翔太、森唯斗【楽天】辛島航、福山博之、岡島豪郎、島内宏明【ロッテ】内竜也、松永昂大【日本ハム】黒羽根利規、大田泰示、西川遥輝、近藤健介【オリックス】比嘉幹貴、海田智行、松井雅人、後藤駿太

 この中で激しい争奪戦になることが確実なのが山田だ。ちなみに山田は昨年オフの時点で既に一軍登録6年が経過しており、現行の制度では順調に行くと、来年オフに国内FA権取得となる。内川聖一、松田宣浩の後継者不在に悩むソフトバンク、長年セカンドのレギュラーが固定できていない巨人は全力で獲得に乗り出すことが予想される。

 野手でもう一人目玉となりそうなのが近藤健介だ。腰痛に苦しんだ時期はあったものの、過去2年間は規定打席に到達して打率3割をクリア。ここまでの通算打率も3割を超えており、その打撃技術の高さは球界でも屈指である。緊急時には捕手もできるという点も評価されるポイントだ。得点力不足に悩むオリックス、阪神などは狙いたい選手だろう。

 さらに、この顔ぶれの中には、このオフにポスティングシステムを利用してメジャー移籍を目指す筒香と、先日来季オフにメジャー移籍の意向を表明した西川も含まれている。筒香は球団の理解がありポスティングシステムの利用が認められたが、メジャーと同じ制度であれば1年早く移籍することも可能だったはずである。また同じくこのオフにメジャー移籍を希望している秋山翔吾は、海外FAの取得を待っての決断だったため 移籍が実現したとしても来季で32歳からのアメリカ生活スタートとなる。これが3年早ければ、より好条件での移籍も望むことができただろう。先述した山田も、昨年オフにメジャー移籍が可能であれば、その選択をした可能性も十分に考えられる。

 また一軍登録6年でFAとなれば、現在メジャーに対する意向が強いと言われている千賀滉大(ソフトバンク)は来年オフに移籍が可能となる。世界野球「プレミア12」でMVPを獲得する大活躍を見せた鈴木誠也(広島)や大瀬良大地(広島)は来年で一軍登録6年をクリアする可能性が高い。彼らの年齢を考えれば、メジャーでも好条件での契約を勝ち取る可能性が高いだろう。

 このように書くと、スター選手が軒並みアメリカに流出してしまい、日本のプロ野球の空洞化を懸念する意見が必ず出てくる。しかし、日本で圧倒的な成績を残しながら、制度が足かせとなって全盛期により高いレベルでプレーできないことは選手にとってもファンにとっても不幸なことである。そのためにポスティングシステムという抜け道を作ったとのかもしれないが、より自由に早い段階で他球団への移籍が可能になればメジャーでタイトル争いをする選手は確実に増えてくるはずだ。世界の舞台で活躍する選手が増えると、ジュニア世代にとっても野球が魅力的に見えることは間違いないだろう。ソフトバンク、巨人に続いて西武やオリックスが「三軍制」を導入すると言われているが、底辺の裾野を広げ、下部組織の充実によって選手の輩出スピードを速めていくことこそが日本の野球界を維持し、発展させていく道ではないだろうか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年12月8日掲載

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