カナダが大麻を解禁してから1年 政府の目論見は外れ、意外に流行らない複雑事情

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合法化で魅力が失われた?

 供給の面では、「店が少ない」というシンプルな事情があると関氏は指摘する。

「大麻の販売を正規で行っている店舗の数と、人口を州ごとに比較したデータがあります。解禁から今夏までに33%売り上げが増加したアルバータ州には301の店舗があるのですが、これは人口1万4000人あたり1店舗という数。ところが、カナダで人口がもっとも多いオンタリオ州は、人口60万人に対して1店舗と店が少なく、店舗を増やす計画を発表しています。次いで人口の多いケベック州も同様で、こちらは販売価格を下げる施策を打ち出しています」

 店が少ないのには、そもそも正規のルートで買おうという人が少ないためかもしれない。依然としてブラックマーケットは存在し続けていて、こちらで買えば安価なのだ。正規品の価格には“大麻税”が含まれているが、ブラックマーケットでの購入にはそれがない。先の『グローバル・ニュース』では、正規販売は1グラム当たり10ドルであるのに対し、ブラックマーケットでは5~6ドルで購入できるという例が紹介されている。

 政府が管理する大麻製品を購入するユーザー2名に対して、ブラックマーケットで調達するユーザーは3名という調査もある。ブラックマーケットのほうが1・5倍、盛況のようだ。

 カナダ統計局が発表した2019年上半期の大麻の入手先アンケート(複数回答可)の回答は、正規販売が48%、イリーガルが42%、友人・家族からが37%、そして栽培8%、その他が4%という結果だった。1世帯4株までは栽培も認められているというが、「当初から、どうやって4株だけかチェックするんだ?と話題になっていました。案の定、ヘビーユーザーは自分で育てているみたいですね」と関氏はいう。

「結局のところ、合法化以前から大麻を吸っていた人は吸い続けていて、そちらは安く、違法に入手して使っている。前々からの馴染みのルートもあるでしょう。一方で、合法化されたことで大麻を吸ってみようという新規の客は、政府が目論んでいたより少なかったということ。おそらく“違法なものを隠れてコソコソ吸う”ことが、大麻の魅力のひとつだったのではないでしょうか。それが堂々と“やって良し”となると、萎えてしまうのでは……」

 合法化で「スリル」や「悪いことをやる格好良さ」が失われてしまった、というわけである。ならば、日本で解禁してしまってもいいのでは――という話では決してない。11月14日付「デイリーメール・オンライン」は“娯楽用大麻が合法化されている米国の11州は、他州と比べて大麻の使用障害に陥っているティーンエイジャーが25%多い”とも報じている。うかつに手を出すのは、ダメ。ゼッタイ。

週刊新潮WEB取材班

2019年11月30日掲載

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