Facebookが「メディアに記事使用料を払う」と表明した思惑

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ウソを見抜く力が要る

 だが、期待できる材料もある、と古田氏が続ける。

「10月25日の発表会、ザッカーバーグ氏がウォール・ストリート・ジャーナルなどの親会社、ニューズ・コーポレーションのトムソンCEOと一緒に登場したことです。トムソン氏は反プラットフォーマーの急先鋒で、私は一緒に登壇したことがありますが、“FBこそがパブリッシャーだ”と主張していて、FBも、伝統的なパブリッシャー同様の社会的責任を果たすべきだ、というのです。ニューズがFBと手を組んだということは、FBに責任を果たす覚悟があると期待しているのかもしれません」

 裏返せば、現在のメディアをめぐる惨状は、巨大プラットフォーマーの無責任が招いたものだと言えよう。状況の凄惨さを井上氏に描いてもらった。

「だれもが無料で自由に情報にアクセスできる環境が、IT企業が目ざすユートピアです。そして、かつてホリエモンが発言したように、ネット上の記事はユーザーのアクセス数が多い順に並べるべきで、メディア側が選んで提供するのは、おこがましいとされます。事実、今のプラットフォーム上は、あらゆる媒体の記事がごちゃ混ぜで、アクセス数の順に並んでいます」

 結果、なにが起きたか。

「以前は媒体ごとに、記事を読むべきか見極めていたユーザーが、タイトルとサムネイルの写真などを見て、アクセスするようになった。結果として、タイトルや有名人の名前で釣るような記事ばかりが出回り、ほとんどのネット記事は羊頭狗肉で、タイトルに釣り合う中身を伴わない。ユーザーは無料でいろんな情報にアクセスできる代わりに、情報の質はどんどん低下し、ウソとホントが入り混じったものばかりになった。2ちゃんねるの創始者、ひろゆき氏が言ったように“ウソを見抜く力”が求められるようになったのです」

 そして井上氏は、

「無料で自由に公開しながらも、その情報の質を確保する。その両にらみの態度こそ、いまプラットフォーマーに求められているのではないでしょうか」

 と締めるが、一つの回答が、記事使用料を支払うというFBの姿勢だろう。

(2)へつづく

週刊新潮 2019年11月28日号掲載

特集「強欲『GAFA』は悔い改めるか メディアに記事使用料という『フェイスブック』の思惑」より

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