小川賢太郎(国民生活産業・消費者団体連合会会長) 【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか】

ビジネス 企業・業界 週刊新潮 2019年11月21日号掲載

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国家に影響を与える

佐藤 私が生団連を知って最初に感じたのは、これは中間団体だということです。私企業でもなければ国家の出先機関でもない。モンテスキューが『法の精神』で言っているところの中間団体です。哲学者の柄谷行人氏も、民主主義を担保するのは「中間団体」だと言っていますが、同じ指摘ですね。

小川 上流下流、その中間みたいな印象を与えるから、中間という言い方は好きではないけども、まあそうです。私は生団連を引き継ぐにあたって「国民の結社」という位置付けをした。政府と個人の間に入って政策提言をしていく組織にする。

佐藤 生団連をNPOとか財団にしないで、任意団体にしておくのがいい。法人格上はゲートボールの会や囲碁クラブと一緒です。

小川 ゲートボールやるよりは、国家の行く末を案じましょうということですよ。ノンガバメント(非政府)とか、ノンプロフィット(非営利)にしたら、自由に活動できなくなる。

佐藤 そうした組織は結局、国家に取り込まれていきますから。国家に影響されない任意団体であり続けるには、相当の知恵と戦略とお金が必要です。電気事業連合会もそんな任意団体の一つですけども。

小川 本来は政党だって、国民の結社のはずなんですよ。でも選挙で議席を得ることによって、上部構造たる政治に組み込まれてしまう。

佐藤 しかもパーティ(政党)は部分の代表であるはずなのに、全体の代表のようになっている。

小川 そう。パーティはイデオロギーに基づいた結社ですが、どこも国民を代表していると言う。おかしなことです。一方で下部構造には経済があり、その代表的存在は経団連ですが、これは中間団体じゃない。

佐藤 違います。資本家の団体です。

小川 生団連の流通サービス企業の一部は経団連にも所属しています。ただその意見はほとんど活動に反映されない。でもGDPの72%は流通サービス業(第3次産業)が担っているんですよ。それなのに、その立場から国家はこうあるべし、法律はこうあるべし、という提言が反映されないのはおかしい。だからそうした声を反映させる仕組みも作っていかなければならない。

佐藤 でもまとまりますか。経営者の考えはバラバラじゃないですか。

小川 「万国の労働者、団結せよ」って誰かが言っていましたが(笑)、「日本の経営者、団結しろ」ですよ。

佐藤 具体的にはどんな提言や要望を出しているのですか。

小川 2019年度は次の四つのテーマにフォーカスしています。

1「国家財政の見える化」の実現に向けて

2「生活者としての外国人」の受け入れ体制の構築に向けて

3「エネルギー・原発問題」の国民的議論に向けて

4「生団連災害情報ネットワーク」の構築に向けて

 国家財政の透明化については、ずっと言い続けている。上部構造を考えるにあたって、その根幹にあるのは税金とその使い方です。それを国民にきちんとわかるようにしなければならない。国家予算は一般会計の約100兆円のほか、特別会計などもあって、連結では240兆円にのぼる。それがどう使われているか、わからない。だから第1段階としては、上場企業には年4回も義務付けられている決算開示を、国もせめて年2回はやるようにさせたい。そして第2段階としては、予算を単年度で決めないようにする。現在の単年度予算編成は、仕組みとして「減らない構造」です。余っても単年度で予算を使いきらないと、来年度予算が減らされるから。

佐藤 年度末の3月には予算消化の工事が多くなるという話ですね。

小川 そうです。単年度予算だと、使わないと損だという発想になる。だからそれをやめて、3年程度でシーリング(上限設定)を設けて予算を作る。例えば300兆円を3年で使うとなると、教育にはこれだけ使って、防衛にはこれだけ、あとは新たな投資に回そうなど、どう予算を使ったら有効なのか、議論の生まれる構造ができる。これは1990年代には破綻寸前までいったスウェーデンが導入しています。このおかげで、今ではOECD加盟国の中では財政透明度も財政バランスも一番いい。

佐藤 国民に税金の使い方がわかるようになった。

小川 それとともに、議論が生まれる構造を作ることが重要です。

佐藤 こうしてお話を伺っていると、全共闘時代からの首尾一貫した意志が感じられますね。やり方は違うけども、国家について考え、国家に影響を与えていくんだ、という思いを強く感じる。

小川 民主主義を前提にするなら、当たり前の話だと思いますけどね。

佐藤 こうした提言を持って、政治に乗り出すつもりはないんですか。

小川 乗り出すも何も、我々は主権者ですよ。政治は外在的なものではない。代議士に委任はするけれども、あくまで主権者は我々です。問題は国民の主権が発動される仕組みが選挙しかないことです。政党も上部構造にビルトインされているから、言いたいことが言えない。だから生団連が国民の結社としてロビイングをして政策を実現させていく。

佐藤 政治団体にはならない?

小川 なりません。

佐藤 どこかの政党を支持するということはありますか。

小川 政党云々というのはないですね。価値観を共有して汗をかいてくれる個人としての政治家には支持もありうる。

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