小川賢太郎(国民生活産業・消費者団体連合会会長) 【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか】

企業・業界 週刊新潮 2019年11月21日号掲載

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小川賢太郎 国民生活産業・消費者団体連合会会長(ゼンショーホールディングス代表取締役会長兼社長)

 生団連の会長として政府にさまざまな政策提言を行う一方、一代で築き上げた「すき家」のゼンショーを外食産業で売り上げ日本一に育て上げ、発展途上国とはフェアトレードを行って貧困撲滅を目指す――東大全共闘の闘士は、今もまったく違う形で社会変革に取り組んでいた。

佐藤 「伝説の経営者」にお目にかかるのを楽しみにしていました。小川さんは、東大全共闘で革命を目指して闘ったのち大学を中退され、港湾荷役会社などを経て「すき家」のゼンショーを創業、外食産業で日本一の売り上げを誇る企業を一代で築き上げられた。

小川 ははは。まだ現役ですよ。伝説に入れないでください(笑)。

佐藤 いや、現役でも伝説になりますから。そして小川さんはもう一つ、国民生活産業・消費者団体連合会(生団連)という、政策を提言する団体の会長も務めている。本日はこちらを中心にお話をうかがうことになりますが、資料を読むと非常にユニークな団体ですね。

小川 会長を引き継いで2年になります。もともとは食品スーパー「ライフ」の創業者である清水信次(のぶつぐ)さんが、東日本大震災が起きた2011年の12月に設立したものです。清水さんは、言ってみれば「最後の兵隊」です。帝国陸軍の一員として、アメリカが九十九里浜に上陸してきたら爆弾を持って飛び込めという訓練をやっていたところで終戦となった。そんな原体験を持つ実業家が、21世紀まで生き永らえ日本を振り返ってみると、国民の生命、生活に拠り所がない、と強く感じられた。大震災の後ということもありますが、政権次第では日本がどうなってしまうかわからない。そこで日本チェーンストア協会を母体として呼びかけを行ったんですね。

佐藤 加盟団体がとても興味深い。

小川 約550団体が集まりましたが、消費者団体と、生活用品や食品メーカーなどの生活産業メーカー、流通サービス産業などが網羅されています。キリンビールや味の素、花王などのメーカーとともに、消費者団体を入れたところが清水さんのこだわりです。

佐藤 清水さんには何度かお目にかかったことがあります。二度と戦争を繰り返さないという信念と、生活者のネットワークを作っていくとおっしゃっていたことが印象に残っています。

小川 理念があるから、生団連という国民組織を作った。ただ、政治に働きかけるなど、まさにこれからというときに、突然、次は小川さん、頼むと言われたんですよ。何の根回しもなかった(笑)。

佐藤 清水さんは2010年に、民主党から参議院議員選挙に出られたことがある。この時も独断専行だったと聞いています。

小川 戦中派というか、帝国陸軍ですからね。

佐藤 その清水さんから引き継がれて、今は小川さんのカラーが強く出ているようですね。

小川 まず理論武装からやった。事務局の職員を集め、学習会を始めたんです。そのテキストが、アレクシ・ド・トクヴィルの『アメリカのデモクラシー』。

佐藤 それは面白いですね。

小川 私は旧制高校以来の伝統であるデカンショ(デカルト、カント、ショーペンハウエル)の系譜のもとで教育を受けてきましたが、そこにトクヴィルは入っていない。でも読んでみると非常に面白い。彼はフランスの貴族出身ですが、アメリカに渡って民主主義の研究をする。当時、民主主義発祥の地のヨーロッパよりアメリカの方が進んでいたんですね。トクヴィルは地べたを這ってという感じで、何々川の西は奴隷制が残っているが東は残っていないとか、奴隷依存の白人は働かないから歩く速度が遅いとか、「現地現物」をつぶさに見てくる。その中で彼は、デモクラシー発達の理由の一つとして、アメリカにはいろんな結社があることを指摘した。

佐藤 コミュニティとは異なるアソシエーションのことですね。

小川 そう。アソシエーションが数多くあるのが、アメリカのデモクラシーの重要な根幹だと言う。

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