小川賢太郎(国民生活産業・消費者団体連合会会長) 【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか】

ビジネス 企業・業界 週刊新潮 2019年11月21日号掲載

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株式会社の可能性

佐藤 対談前にアフリカ・ルワンダでのフェアトレードのビデオを見せていただきました。フェアトレードは、途上国の生産者と公正な価格で取引を行い、彼らに正当な収入をもたらす。ゼンショーはルワンダでコーヒー豆のフェアトレードを行い、現地で水道を引くなどの活動もされている。生団連のお話とあのビデオを合わせて考えると、小川さんには何かもっと大きな社会改革の計画があるような気がする。

小川 まあ、そうとも言えるかな。この世界で、株式会社ができることは何か、ということを考えています。17世紀初めに世界初の株式会社、東インド会社が誕生しますね。この会社は国境を越え、広く人材もお金も集めて、莫大な利益を得た。株式会社というのは、やり方によってはグローバルに活動し、国家を超え、どこまでも拡大することができる。しかし東インド会社の利益は、アジア・アフリカ地域で収奪型の植民地経営を進めることによって得たもの。ゼンショーの目指すものは違う。フェアトレードにしても、こうした悲惨な歴史に対する一つのアンチテーゼでもあるわけです。

佐藤 マルクスは『資本論』の第3巻で、株式会社は資本主義システムを超える可能性がある、と言っています。

小川 そうですね。まあ東インド会社の場合は、グローバルでも、ロンドンの意思によって設計され、ネーションステイト(国民国家)の枠を越えるのが難しかった。でも株式会社の意思次第ではいろいろやりようがあるし、マルクスが理想とした社会の一つのツールにもなり得る。

佐藤 いわゆるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などを見ていると、資本と世界革命の思想はこういう形で結びつくのかと思いますね。一方で軍事力と世界革命の思想が結びつくとネオコンになるんじゃないか。

小川 世界革命という概念が適当かはわからないけども、GAFAの展開の仕方は株式会社の一つの可能性を示すものだね。

佐藤 でも小川さんの考えているのはそちらではない。ルワンダが一つのモデルですね。そこでアメリカやヨーロッパがやっているようなことをしても無理だと考えている。ルワンダでは何よりもまず共同水道を作らなきゃいけない。各戸に水道を引く以前に、共同水道の段階から始めるという貧困がある。

小川 問題はなぜそういう状態にあるのかですよ。ルワンダでは部族抗争で100万人が虐殺されました。これはヨーロッパによる支配の一つの結果です。

佐藤 宗主国による分割統治が原因ですよ。

小川 そう。ルワンダは宗主国がベルギーだけども、典型的な分割統治をやり、少数派のツチ族を使って多数派のフツ族を抑えた。

佐藤 シリアも同じです。フランスがアラウィー派という人口の12%くらいの少数派に治安を担当させた。

小川 これはヨーロッパの世界支配方程式ですよ。中東やアフリカではまだ50年とか60年前のことで、そこから脱却しようしても、まだまだ混乱の中にある。この世界史の構造を転換するにはどうすればいいか。僕は実業家だから、株式会社を使って世界の構造を変革していこうと考えているんですよ。

佐藤 その一つがフェアトレードなんですね。

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