巨人・山口俊がメジャー挑戦 巨人OBも元スカウトも「先発では通用しない」

スポーツ 野球

  • ブックマーク

Advertisement

「この度、私の夢でありましたアメリカ・大リーグに挑戦させていただくことになりました。読売ジャイアンツ、原監督、コーチの方々、チームメート、ファンの方々に、この3年間感謝申し上げます。新たな挑戦に向かって、より精進して参ります」

 今季、巨人のエースとして活躍した山口俊がポスティングシステムを利用して、メジャーリーグへの移籍を目指すことになった。11月18日に都内で開かれた記者会見には、原辰徳監督と今村司・球団社長も同席。山口は、冒頭のように、球団への感謝とメジャー挑戦への決意を表明した。これまで巨人が頑なに認めようとしなかった同システムによる移籍を認めたということで、“歴史的出来事”と取り上げるマスコミもあった。

山口は柳ヶ浦高のエースとして甲子園で活躍。2005年の高校生ドラフトで1巡目指名を受けて横浜(現・DeNA)に入団した。横浜では、14年には先発に転向するが、主に抑え投手として通算11年間で通算111セーブをあげた。16年オフにFAで巨人に移籍するが、その1年目は満足な成績を残せなかった。17年8月に飲食店で泥酔して右手を負傷、その治療に訪れた目黒区内の病院で暴れてトラブルを起こしてしまう。書類送検されて不起訴処分になったもの、球団には出場停止処分や罰金、減俸など厳しい処分を受けた。

ファンからは、「山口はFAでの不良債権」と揶揄されていたが、転機となったのは18年。力を適度に抜きつつ、しっかり腕を振るスタイルを身につけた山口は、7月27日の中日戦でノーヒットノーランを達成。さらに自身初となる規定投球回に到達するなど、見事に復活を果たした。また、今季は最多勝(15勝)、最多奪三振(188)、最高勝率(.789)のタイトルを獲得する活躍をみせ、先日開かれた世界野球「プレミア12」では侍ジャパン入りも果たしている。

いまやNPB最高投手のひとりとなった山口のメジャー挑戦。海の向こうでも活躍できるのだろうか。巨人OBの野球解説者・篠塚和典氏は、「現状の山口では、メジャーで大活躍する姿を想像することは難しい」と話す。

「技術的な話をすると、山口は腕を下げ気味で投げるフォームですが、抜け気味の球がシュート回転をします。いわゆるツーシーム系の鋭い真っすぐというものですが、この球は右打者とって自分に向かって来る。日本の右打者は、(ボールに向かって)踏み込んで打つことに恐怖心があったので、この球は有効だった。では、メジャーで通用するかと問われると、一つの判断材料になるのは「プレミア12」での投球ではないでしょうか。数試合での投球だけで、通用するかどうかを判断するのは危険ですが、『プレミア12』での投球を見ていると、海外のバッターと対峙するには現状では厳しいと感じます。なぜなら、彼らは、死球を恐れずにどんどん踏み込んでスイングしてきます。山口が投げるシュート系ストレートは、それほど球速がないので、踏み込んだバッティングをされると、バッターにとって打ちやすい球になってしまう恐れがある。また、決め球であるフォークもまた、腕が長い外国人選手が踏み込んでスイングすれば、捕えられてしまうでしょう。こうした点からみても、山口のメジャー挑戦はかなり苦戦を強いられるのではないかと思います」

先発への“こだわり”

 一方、元フィリーズ極東担当部長として、山口をチェックしてきた大慈彌功氏は、スカウトの立場からこう話す。

「山口のストロングポイントはフォークです。あの球は、初見の打者にとってバットに当てることも難しい。ただし、武器として使うのには、フォーシーム(=真っ直ぐ)が必要になるが、(山口の球には)球速がない。そうなってくると、長い回を任せるのは厳しいでしょう。先発としては厳しいので、ブルペンでの契約((リリーフ投手としての契約)になるでしょう。各チームの事情によっても変わってきますが、移籍先が決定するまで時間がかかるかもしれないですね」

 さらに、山口には“こだわり”があるという。大慈彌氏が続ける。

「山口は、先発へのこだわりが強かった。横浜時代からメジャー志向が強かったので、メジャーのスカウト陣も彼をマークしていましたが、メジャー側はあくまでブルペンでの獲得でしか考えていなかったことから、話は先に進みませんでした。今回のポスティングで山口本人はどう考えているのか。以前同様に先発にこだわるようなら、手を挙げる球団も限られるのではないでしょうか」

 先発投手ではなくリリーフ投手であれば、メジャーで通用する可能性があるという大慈彌功氏。山口と同じようなタイプで、メジャーで結果を残した投手の名前を挙げてくれた。オリックスからダイアモンドバックスに移籍した平野佳寿だ。移籍1年目の昨季は75試合で4勝3敗3セーブ防御率2.44、今季は62試合で5勝5敗1セーブ某業率4.75と奮闘している。

「現在、メジャーのブルペン陣の平均球速は95マイル(約153キロ)ですが、平野は平均91マイル(約146.5キロ)くらいしか出ない。しかし、それでも結果を出せたのは武器となるフォークがあったからです。先発として1試合に何度もバッターと対戦するのは難しくても、リリーフとして短い回ならば十分通用する。山口がメジャーで生き残るのもそのあたりだと思いますね」(前出の大慈彌氏)

 以前の不祥事のせいで、プロ野球ファンの厳しい批判にさらされることが多い山口。メジャーでの活躍で、こうしたファンを見返すことができるのか。

週刊新潮WEB取材班

2019年11月24日掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。