「孫正義」一世一代の大芝居で取り繕う窮状 真っ赤っかどころか火の車「ソフトバンク」破綻への道

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最良・最悪のシナリオ

 SBGにとって最良のシナリオは、SVFから第二のアリババが出てくることである。ウーバーやウィー社はその候補銘柄だったが、今回その目はなくなった。

 逆に、最悪のシナリオはSBGの資金ショートであり、これは予断を許さない。SBGは前述の通り16兆円の連結有利子負債があり、毎年1兆円程度の借入返済期日がやってくる。これに対してSBGの19年9月中間期における連結営業キャッシュフローは3736億円(年間換算7472億円)にすぎない。現在の孫流ビジネスモデルを継続する限り、SBGは毎年2528億円(1兆円−7472億円)の借金を連結で永遠に増やし続けていかなければならず、それは不可能である。

 特に、22年3月期は国内の劣後債など合計1兆3056億円の返済期日がやってくる。また、今回ウィー社の追加ファイナンス1兆円のうち、5千億円が通常の返済とは別に降りかかってくる。みずほ銀行がこれだけの資金を出せるかどうかは疑わしい。“得意”の社債発行で凌ぎたいところであるが、右肩下がりに推移する現在の4千円程度の株価では社債は売れない。こんな時に虎の子のアリババの株を売り出せば、株価は大暴落するのが関の山。私には、返済資金の目途はつかないように思える。

 本稿に対してSBG側に回答を求めた。その主張は次の2点に尽きる。

(1)弊社は持株会社ですが、連結対象の子会社も含め、投資先は全て独立採算で運営されており、その有利子負債の返済義務は持株会社であるSBGには一切なく、法的にも道義的にも返済する必要のないものです。

(2)ご提示の営業キャッシュフローは連結ベースであり、ソフトバンク(株)、スプリント、SVF等のキャッシュフローを含みます。既述の通り、SBGは子会社のキャッシュフローを使用しませんので連結営業CFはSBG単体の負債返済能力とは全く無関係です。

(1)は道義的にどうかというのは私には分からないが、法的にはその通りだと思う。(2)で〈~全く無関係〉というのも法的には正しい。

 ここで、SBGは持株会社SBG単体での財政状態を主張している。すなわち、連結ベースで判断するのと持株会社単体ベースで考えるのでは、SBGの財政状態は全く違うということになるのであるが、私は、連結ベースで判断すべきだと思う。なぜなら、「SBGの投資先は全て独立採算で、持株会社SBGは、その負債に責任を負わず営業キャッシュフローにも関与しない」と言いながらも、SBGは、その投資先を時価評価してそれがSBGの株主価値と主張しているからである。

 独立採算の投資先が債務弁済に支障を来せば、その投資先の時価評価は大きく毀損するのだから、その毀損が決定的に重大なものであれば、SBGは株主価値を保全するために投資先の資金繰りを支援せざるを得ない。現に、独立採算であったウィー社に対して今回1兆円もの追加ファイナンスを打ったではないか。独立採算子会社の負債に責任を持たないのであれば、独立採算子会社の時価を株主価値として主張すべきではない。良いところ取りはできない。

 SBGのビジネスモデルは、資本市場と金融市場からの潤沢な資金調達を前提として際どく成立してきた。日本社会はSBGの資金調達に対し、強く警戒しなければならない。

細野祐二(ほそのゆうじ) 会計評論家
1953年生まれ。「会計士界のレジェンド」と称される会計評論家。財務諸表危険度分析プログラム「フロードシューター」を開発した。フロードシューターの分析通り、ライザップは業績見通し下方修正を行ない、ソフトバンクグループの携帯子会社ソフトバンクの新規上場も、初値公募価格割れとなる事態が出現した。複式簿記研究会を主宰。年会費は1万円。http://yuji-hosono.com/

週刊新潮 2019年11月21日号掲載

特集「『孫正義』一世一代の大芝居で取り繕う窮状 真っ赤っかどころか火の車『ソフトバンク』破綻への道」より

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